7月25日の日記
2009年12月3日。
その一日が無ければ、今の様なスタイルは無かったかもしれない。
それは、初めて磯に立った日から数え、一か月と5日目の事であった。
今もその瞬間は鮮明に蘇る。
ヨコワ(クロマグロの幼魚)
75センチ、7.15キロ
本当に夢の様であった。
まさか、自身が投げるルアーに、それも岸から出会えるとは全く思わなかったのである。
おぼろげに、いつかルアーでマグロを釣ってみたいとは思っていた。
しかしそれは、幼い子供が、いつか宇宙飛行士になりたい!というのと変わらないものだったろう。
オフショアのツナゲームすら知らなかったのである。
この日を境にして、私の南紀への夢釣行がスタートした。
盲信であったかもしれないが、夢は夢で終わらないと信じた。
強く信じ、求め続けるなら。
その後は、一般的に青物と呼ばれる、ブリ、ヒラマサ、カンパチを求めて行った。
その想いは、皆様が想像されるよりも更に強く、濃厚であったかもしれない。
文字通り、寝ても覚めても、四六時中、魚の事を考え続ける毎日であった。
気持ちはより強くなる一方で、ショアからはツバスが消えてしまった。
その頃には既に、当ブログを始めていたので、惨憺たる結果をご存じの方もいらっしゃるだろう。
その日々が無駄ではないと信じたいですが(笑)
それと並行して、自分なりにショアマグロを追っていたのであった。
ずっと、次の様に考えていたのである。
一匹目は奇跡。
マグレ、交通事故だろう。
いくら、マグロへのアプローチ法を唱えても、おそらく誰も信じはしないだろう。
機会がある度、自分なりの理論を語る事もあった。
ちゃんと聞いてくれる方もいれば、まったく鼻で笑う方もみえた。
悔しかったが、信じてもらえなくて当たり前だと思った。
その日以降、何の結果も出せてはいなかったからである。
それでも、これは自身の道であると続けて行った。
出会えるチャンスは限られている。
昨年、やっと出会え、二匹に喰わせる事が出来たが、無念のフックオフに泣いた。
結局は妄想の域を出なかったのである。
だが、それで諦める私ではない!
過去のヨコワは、きっと海からの啓示であるとさえ思う様になった。
誰に教わるでもなく、様々な魚からその答えを見出そうとした。
魚種、種族ならではの特徴、傾向性等は確かに存在する。
フィッシュイーター達はどこかでつながっている、そして、釣りもどこかでつながっていると信じた。
しかし、ショアでマグロ属と直接向かい合って、答え合わせをするチャンスは殆ど無かった。
今回の釣行は明確である。
狙うはヤツらであり、あとは状況に応じて釣りをする事にした。
前回の釣行で、沖に尋常ではないサイズの魚達を見ていた。
おそらく、本マグロではなかったが、同じマグロ属に間違いはない。
今年もシーズン開幕より、虎視眈々と狙ってはいたのだが・・・。
自身の休日と、海況がマッチしなかったのである。
特に、度重なるシケには悔しい思いをしていた。
釣行前夜、仕事から帰り、早速準備を始めて行った。
急な休日の為、何の準備もしていなかったのだ。
面倒くさがりやで、大の呑兵衛の私は普段、殆ど釣り具には触らない。
全く一から、釣行直前のインスピレーションで、即席に道具を整えて行くのである。
今回もまた、狙う魚種用にルアーを整理して行った。
プランB、プランC、ブラーブラーブラーって感じだ。
準備をしながら、磯に立ってから終わるまでの一日をイメージして整えて行った。
そうこうしている内に、タイムリミットが迫る。
午前一時、慌てて荷物を積み入れた。
今日の南紀特急にはハイブースト!で頑張ってもらう。
午前3時過ぎ、南紀に無事に辿り着いた。
馴染みの渡船屋に着くと、すでに何名かの方の準備は完了していた。
どうやら数名のルアーマンもみえる様子であった。
時間に余裕が無いのでとにかく急ぐ。
乗船間際にやっと落ち着いたが、どうやら、そのルアーマン達は以前、磯でお会いした方々の様だった。
二組、私を含め五名である。
一度しかお会いしてはいなかったが、今日も楽しい一日になるなと胸が高鳴った。
急いで乗船する。
今日の予報は波高1.5メートル、次第に2メートルとなるとの事。
雨の予報だったので、暑くてイヤなのだが合羽を着こんだ。
風は最大でも5メーター程と、それ程気にする事もなさそうである。
港を出て大海原を進むが、海は予報と大きくは違わない。
しばらくして、目標の磯が見えて来たが、凪いでいて渡礁は間違いなさそうであった。
荷物をまとめその時を待つ。
底物師達を先頭に、ルアーアングラー達も一気に渡って行った。
まずは荷物を降ろし、ゆっくりと準備して行った。
用意の良い方は、早速キャスト体勢に入られている。
自身はやっと、ロッドをケースから取り出した所であった。
海を一望する。
ここではよく見る光景であった。
潮はきいてはいないが、西から東へとよく流れている。
激流ではないが、強く、速い川の流れの様であった。
各自、思い思いの場所に立って行く。
自身はまず、カンパチを狙って根周りにルアーを通してみる。
時折、ガツンっとした感触が穂先に伝わった。
オキザヨリ先生の様だ。
しかし、いつもに比べ彼らは少ない様である。
今日も朝から大切な事を教えてくれた。
ふと、立ち位置をかえ、岸寄りを見ると絡む様な潮が見てとれる。
試しにルアーを投げると、おびただしい程のベイトが逃げたり、群れで着いてくるのだ。
すぐに先生達がルアーめがけ突っ込んで来た。
今朝はコッチなんですね!
そう悟り、すぐに釣りを中断する。
とても辛い決断だったが、今日の本命は違うのだ。
周りのアングラー達を見ると、気持ちよくロッドを曲げていた。
彼らの引くペンシルに、高活性のシイラ達が狂っているのだ。
ここ最近、ずっとシイラの姿を見ていなかったので正直、安堵した。
少なくとも、シイラの顔を見れたなら満足出来る。
そう思いながら、信じるルアーを三つ握りしめた。
そして、ここだという場所に向かう。
まずはポッパーを投げて行った。
数投していると、一匹のエメラルドグリーンが近寄って来る。
シイラである。
今はまだ早いよと、アクションを止めやり過ごそうとした。
そのストップにスイッチが入ってしまった様だ。
身をよじらせ、一気にポッパーを引っ手繰って行った。
フッキングは入れなかったのだが、勢いよく走った為にガッツリと掛かってしまった。
90センチ程度のメスを優しく寄せて抜き上げる。
なるべく傷つけない様に逃がしてやりたいのだが、激しく暴れるのだった。
濡れた磯に一瞬置き、その隙にリーダーを持って宙吊りにする。
ブンブンっと暴れるが、うまくフックだけを持ち外す事が出来た。
波のタイミングを見て、海に放つのだった。
ふう。
ここで、すぐにもう一つのルアーに交換する
なるべく短時間で、今日の答えを見つけようとしたのだった。
結んだのは、小型のウッド製ペンシルであった。
弱シンキングではあるが、ロッドの角度、リーリング速度で様々な動きを演出できるもの。
コイツで広範囲をスピーディーに探ってみる。
20投ほどしたろうか、全く何の反応も見る事は出来なかった。
周りを見ると、コンスタントにシイラが釣れている様子であった。
ここで、しばし海を見て考える。
表層に群れるベイトは見えない。
シイラはヒットしてくるが、シイラ達のボイルは確認出来ない。
ルアーには反応しているが、それはルアーを第三のベイトと思い込んでのヒットではないか。
確か、そんな風な妄想をしていた。
レンジ、ベイトが違うのではないかと仮定したのだった。
自身の決断は、ジグであった。
持ってきた最後のルアー、そのジグをゆっくりと結んで行った。
早速、キャストを開始する。
緩やかな風は、少しだけラインを膨らませて行った。
そのままでは、このジグは沈もうとはしない。
すぐにラインスラッグを回収し、なるべく、ジグと一直線になる様にして行く。
続いては潮の流れが、ジグが沈む事の邪魔をする。
これはうまくコントロール出来ないので、すぐさま回収する事にした。
なるべく、潮の弛んでいる場所にキャストし直し、沈ませながら潮流に乗せて行く事にする。
ボトムへのファーストコンタクトから、アクションを入れて水面直下まで引いて来る。
その、およそ40メーター程の区間に全神経を集中して行った。
何度も繰り返していると、何となくそのコツを掴める様になった。
思う様なレンジ、ラインをトレースし、ここぞという流れに漂わせていた時、ゴコンっという感覚にはっとする。
すぐにアワセを入れると、海藻を掛けた様な重さを感じた。
潮流に乗っている為、ぐーっとした重みがある。
Z6500EXPのパワーで一気に巻き上げると魚であった。
40センチ弱のスマカツオであった。
美味しいのでとても嬉しい。
すぐさま首を折り、血とワタを抜いてクーラーに入れる。
今夜のアテの確保完了。
その後もコンスタントに当たるのだが、フックが大きい為になかなか乗ってこない。
何故か、スマのヒットは悪くない気がした。
あとは、ヤツらが近づいてくるのを待つだけだと。
おそらく、それから10投はしなかったろう。
ふいに、まったく体験した事のない衝撃が襲った。
ガン!!!
ロッドを引っ手繰られるとか、そういう感覚ではなかった。
大きく硬い何かが、凄い速さでぶつかってきた様な感覚であった。
考える間もなく、反射的にアワセを叩きこむ!
二度、三度とバットを意識して追いアワセを入れた。
一瞬だけソイツは沈黙すると、ゆっくりと締めこむ様にしてロッドを絞り込んで行く。
たまらなくなって悲鳴をあげるソルティガ!!
加速度的にスプールの逆転は激しくなった。
つんざく様な引きにバランスを崩し、磯からズリ落ちそうになる。
今日のドラグは約7キロに合わせている。
ヤツらを想定して、弱すぎず、強すぎず、自身が出した結論がそれであった。
しかし、そのランは全く止まる気配がない。
今にも、海面に刺さろうとするロッドの角度を見て息が止まった。
深く、更に深く、ソイツは潜航しているのである。
このままでは、険しい根に到達するのは避けられないだろう。
次の瞬間、Z6500のスプールを鷲掴みにしていた。
それでも、僅かにスプールは逆転して行く。
大急ぎでドラグを絞った。
何回転まわしただろう、15キロ、20キロ、おそらくはそんな感じだったか。
やっと魚は止まった。
今度はこちらの番だ!
まずは全力でハンドルを巻いた。
しかし、強くて巻けやしない。
ソイツが動き、緩んだラインだけを回収する感じである。
続いて、下半身も使った、ショートポンピングを試みる。
これは効果的だったが、魚が動き回って不安になった。
ほぼ、無酸素での激しい運動をしている為、頭がチカチカして来る。
どうにも力が入らないのだ。
それでも力を振り絞ってリフトさせようと試みる。
何度か繰り返す内に、魚を浮かせられなくなってしまった。
休んではヤラレるのは分かってはいても、身体が言う事をきいてくれないのである。
残された道は、ロッドをしっかりと立てる事であった。
前進も後退もしないまま、その場で押し問答をするのだった。
自身か魚か、先に果てた方が負ける。
しかし、それも長くは続かなかった。
一瞬の隙を見てソイツは走り、また、目の前を流れる潮が少し変わったのである。
その強く、速い潮にソイツは乗ってしまった。
先程とは比べようもない重さが増すのだった。
魚の引きは随分と大人しくなったが、もはや、その重さを引き寄せる事は出来なかった。
流れにのって、更に左手の方へ向かう魚。
もうすぐ、張り出した岩にメインラインが触れてしまう。
万事休すであった。
心配したルアーマン達が、キャストの手を止め、こちらに向かって何かおっしゃってみえた。
必死になっていて、その時の詳しい状況は正直、おぼろげでしかない。
自身の立ち位置ではこれ以上、ファイトを続行する事は不可能に思った。
その方々が立っている場所、そこに向かわない限り、ラインブレイクは近いのだ。
おそらく、可能な限り、天高くロッドを突き出しながらラインの干渉を避けた。
彼らの場所までは、濡れて非常に滑りやすく、アップダウンがある道を行かなければならなかった。
直線的に進む事は不可能であり、大きく迂回しながら約20メートルほど進まなくてはならない。
多分、呟く様に彼らに言った。
中断させて申し訳ないが、そちらに向かうと・・・。
ラインテンションを張らず抜かず、歩きながらハンドルを微調整して行った。
タイドプールと、海とのわずかの隙間を通り抜ける。
そこからは転がる様にして辿り着いた。
抜けたテンションをすぐに取り、ロッドできいてみる。
奇跡的に魚とはまだつながっていた!
すっかり流れにのり、瀬際まで魚は到達していた。
渾身の力でリフトするが、すぐにあの嫌な感触が伝わってくる。
魚及び、ラインが根に触れているのだ。
そこで無理に寄せる事は出来ない。
何とか沖に出せないかと少しラインをやった。
幸運にもソイツは少し岸を離れ、再び流れにのってくれた。
足元を見ながら、険しい根が切れた場所を見つける。
魚がその真ん前まで来た瞬間、残っている力を振り絞った。
それでも簡単には寄らなかった。
おそらく、魚相手にこんなに力をかけた事はない。
ロッドが折れないか恐ろしくなった。
まだ、根に触れる感触はあったが、もはや体力、気力とも限界だ。
悔いは無い!
最後の力を振り絞ると、今までの重さが無くなって行くのだった。
ついに魚が浮く。
無意識に叫んでいた!
そのままの勢いで抜き上げていた。
ビンタ(キハダマグロの幼魚)です!!
顎からエラにかけて損傷は、瀬際での厳しい攻防によるものです。
本当に辛かったです。
何度、気持ちが折れそうになった事か。
流れにのせてはいけない、貴重な経験を身を持って味わうのでした。
ともかく~やったね!!!
貴重な朝のチャンスタイムにも関わらず、その手を止めて下さった四名の方々。
本当に嬉しかったです。
誠に有難うございました。
お言葉に甘え、写真まで撮って頂きました。
何と美しい姿でしょうか。
南紀の海の仏様、最高のプレゼントを有難うございます。
Rockbeachの顔が日焼け止めで真っ白です(笑)
転がる様にして移動した際、ライジャケのポケットから落ちてしまいました。
換えたばかりのスマートフォン。
またもや殉職であります。
お財布に厳しすぎます。
ビンタをすぐにシメる事にした。
灼熱の磯ではすぐに痛んでしまう。
血、エラ、ワタを抜き、クーラーボックスにはたっぷりと海水を注いだ。
可能な限り冷える様にと、クーラーの上に布を重ねて行った。
その後は様々なジグで探ってみた。
この日、シイラは単発、もしくは小グループのみの回遊であったが、活性は高かったと思われる。
他のアングラーの方々も、トップで次々とシイラをキャッチされて行かれた。
私はジグを通したのだが、ジグでもシイラがよくヒットしてくれた。
驚いたのは、瀬際のほぼボトムでのヒットが数回あった事だ。
シオ狙いのアクションに喰らいついた。
肝心のシオは手の平サイズが数匹、ワラワラと着いて来たのみであった。
スマもポツポツとヒットしてくれた。
一番小さい、60センチ程のシイラを一匹だけキープさせてもらった。
かなり暑く、クーラーの氷はすぐに小さくなって行った。
早上がりしようかと思ったが、この日、ご一緒させていただいたアングラーの皆さんと釣りをするのが、とても楽しかったのである。
様々なお話をさせて頂いたが、お話が尽きる事は無く、時間はすぐに経って行った。
また、どこかでお会い出来る事を楽しみにしています。
狙い通りのルアー、メソッドにて出会えた事が本当に嬉しかった。
しかしながら、今回もまた偶然、交通事故的なヒットであった可能性は否定できない。
おそらく、小遠征のホリデーアングラーの私に狙えるチャンスは、年に数回あるかないかだろう。
数匹釣れただけでは、そこからは何も分からないのである。
嬉しいが、そこは自分に対してシビアに向かいたい。
いつか、本当に狙って獲ったと言える時まで、ヤツらを追い求めて行きたいです。
おそらく、これ以上のサイズが掛かったら、私には獲れない事も分かった。
今回は最高のタックルに助けられはしたが、更にそのパワーを引き出すのは自身の肉体である。
筋力、持続力、心肺機能を高める事が必至である。
それでは
タックル
Rod MC Works RAGING BULL 100XR-2
Reel DAIWA SALTIGA Z6500EXP
Line YGKよつあみ PE #4
Leader VARIVAS NYLONE 100LB