2011年10月

ジグ場

10月19日の日記







前回の単独での釣行後、しばし悩む事となる。
通い込む事が、自由に出来た今までとは違うのだ。
たとえ釣れなくとも、自身の足で見てきた事は、地味ではあったが次につながるものであった。
ここ最近、自力での釣行が難しい為、自然と次を考えない様にしていた自分がいる。
現場で感じ、見てきた事、また、自身が頼りにしている幾つかのデータ等。
それらをゴチャ混ぜにして、何かを見出すといった事を止めてしまっていたのだ。
しかし、今回、あえて考えてみる事にした。
次があるかどうかは分からない。
しかしながら、きっとその答え合わせは出来る事だろう。
今の私には、素晴らしいショアマンの友人達がいるのだから。





この時、単純に感じたのは、今は南紀ではないというものであった。
誤解の無い様に言うと、限られた休日に向かうしかない、「私」、にとってはとの意味である。
海も、そして青物も、とても、私には読む事は出来ない。
毎日、通う事が出来るアングラーの五感には程遠いものだ。
遠征など出来る訳もない私が注目したのは、我が故郷の三重の地であった。
おそらく、気のせいだろうか・・・。
夏の終わり頃から良い潮が当たっている風にも思える。
全く、まっとうな理由など無いが、今年は過去4年の憂いを払いのける海であると信じている。
それは、三重だけでなく、南紀もまたそうであると考える。
ともかく、この三重の地に照準を絞って行ったのである。





三重の磯は誰にでも優しくはない。
山を幾つも越え、原生林の道なき道を行く場所も多くある。
また、登山用の本格的な道具を用いなければ降りられない場所もある。
何か所か行った事があるが、私にはとても辛く、危険であると感じた。
そんな、磯へのルートですら、ベテラン曰く、最もエントリーしやすい場所の一つであるとの事であった。
今回、自身が必要としたのは、「水深」、である。
ともかく、好きなジグの釣りをやりきりたいと思ったのだ。
よって、まだ、自身が立った事の無い磯に着目して行くのだった。






先輩方に、少しだけアドバイスを頂く事にした。
詳しいルートはさておき、近隣の住民、漁業関係者の方々に迷惑とならない駐車場所を知りたかったのだ。
すぐに、その場の最善の駐車スペースを教えて頂いた。
そしてまた、初めて向かうには危険すぎる事を告げられたのである。
しかし、一度思い立ったら諦める事が難しい性格の私。
それを知ってか否か、ある先輩から連絡を頂くのだった。
全くの奇遇であるが、その方も釣行を予定しているとの事。
しかし、私にはまだ、出撃出来る見込みは無い。
悩んでいる頃、Taka氏より連絡を頂いた。
その内容とは、彼もまた三重の磯に立ってみたいとのもの。
仕事を調整して、私の休みに合わせて頂けるとの事であった。
こうして文章にするととても照れくさいのだが、私は本当に幸せであると感じるのです。
こんな身勝手で難しい人間であるにも関わらず、何人もの本気の男たちが気にとめて下さっている。
Taka氏へのご返事と共に、先輩に連絡するのでした。
我々も出撃しますと。
釣友のご厚意により今回のRock'n'Rollが始まります。








午前1時過ぎに到着する。
寝ないとしんどい、それは勿論分かってはいるのだ。
しかし、海を見ていると、その甘い誘惑が惑わすのである。
少しだけと、糸を結ぶ二人であった。
季節である、軟体生物の捕獲に竿を振るのである(笑)
しかし、雰囲気とは違い、全くの不振であった。
ここはそう、私がエギングの修行の為に何度も訪れた地であった。
しかしこの時、我流ではあるが経験を重ねた誘いには全く反応を見せる事は無かった。
潔くも諦め、今から向かう磯に意識を高めるのだった。
装備を整えながらその時を待つ二人であった。
するとすぐに、見慣れた車のシルエットが暗闇に浮かび上がる。
先輩のものであった。
Taka氏とは初対面でいらっしゃるので、まず軽く自己紹介をさせて頂いた。
ご挨拶をさせて頂いている内に、すぐに先輩は準備を整えられている。
いつもながら感心させられるのである。
ほどなくして三人は山に向かった。
まだ辺りは真っ暗な闇に包まれている。
午前4時50分頃の事だった。





山に分け入ってすぐ、実は今回の釣行を少し後悔した。
僅か数メーター進んだだけなのだが、急な勾配にすぐに息が上がってしまったのだ。
おそらく、強靭な肉体を持っている、Taka氏には何の事はないはずである。
ゼイゼイいいながら登る内に、会話さえもおっくうになるほどだった。
人が一人、やっと通れる程の道を行く。
それは、かろうじて道と呼べる程度のものであった。
ヘッドランプの灯りは狭い範囲のみを照らし出す。
落ち葉が堆積し、とても滑りやすいのだった。
暗くてよくは見えないのだが、もし、滑り落ちたならば、ただでは済まないだろう。
一歩、また一歩と、耐油長靴の足もとを確かめながら進むのだった。
全く同じに見える景色をみていると、いつまで続くのだろうと不安になった。
あるのは歪な形の木の根、生い茂る草木、そして土と落ち葉だけである。
すると急にその景色が変わった。
足もとに、いつもの見慣れた岩肌が見えて来たのである。
おそらく、もうすぐ磯に出る。
そう思い少し安堵するのだった。
しかし、その思いはすぐに打ち消されて行く。
ゴロゴロした岩が埋まる坂道をよじ登って足がすくんだ。
暗闇のすぐ先に、断崖と急斜面が照らし出されたのであった。
そこからの一歩は更に慎重となった。
ミスは絶対に許されないのである。
ここで、先輩から進み方を教わる事となった。
とても丁寧に、本当に細かく指示を頂いたのである。
その通り、ゆっくりと確実に足を踏み出して行った。
おそらく、先輩がいなければ、恐怖で立ち尽くしていたかもしれなかった。






やがて、釣り座となる先端付近に到着して、やっと生きた心地がしてくるのだった。
自身にとっては、ほぼ限界と言えるハードな道のりだったのだろう。
いつもは、かなり時間が経過してからやって来る、筋肉痛がすでに起きているのだ。
暗闇での慣れない山歩きに、おそらく変に力が入ってしまったのも理由だろう。
しかし、何と言うか、猛烈に清々しい気分なのである!
薄明りの中で広がる海、景色が素晴らしい。
朝の冷気を帯びた風が、キンっと頬を撫でて行く。
これからの釣りに心躍るのだが、この時、すでに心は半ば満足しているのだった。
この感覚はとても新鮮なものであった。
否、おそらく、昔感じたあの感動かもしれなかった。
更に明るくなるまでの間、しばし談笑となった。
今日の予報は、北東の風4~7メーター程度、波高は次第に、4メーター、ウネリを伴うとの事。
おそらく、相当に足下から水深があるのだろうか、時化ともいえる状況でさえ、波の音はそれほどではない。
やがて、空が白々して来た頃、各人が組みあげたタックルを持って立ち位置に向かった。
先輩は暗い内には、ヒラを狙ってみると、足早にどこかに向かわれてしまった。
明るくなってきて、更にはっきりと見える様になると、改めて足場が高い事に戸惑ってしまう。
高所恐怖症ぎみの私は、高く、滑りやすい岩の上でフルキャストする事が出来ないのだ。
波の方向は目の前からであり、時折、大きく海面が盛り上がると強く岩に打ちつける。
波飛沫が高くまで上がり、磯の上に降り注いで行った。
薄っすらと苔がはえていて、濡れた靴底ではズルっと滑ってしまう。
バランスを崩さない様、慎重にファーストキャストを撃った。



まず、結んだのはお気に入りのポッパーである。
しかし、どうした事か、その大きいカップ部分はまるで水を噛まない。
弱シンキングの調整を与えてあるのだが、少し間を置いた位では全く沈もうとはしないのだった。
足場の高さに加え、強い横風が吹きつけているからだろう。
その後、すぐに、40グラム以上ある、12センチ程度のシンキングペンシルに換えてみる。
いつもの南紀のポイントであれば、数秒おけば約2メーター程度まで沈むものだ。
しかし、一向に沈み行く気配が無い。
ならばと、表層を速いテンポで引こうかと試みるも、風にラインを取られ、水面を滑って行ってしまうのである。
今度は、シンキングミノーを結んでみた。
しかし、複雑な潮流のせいで、全く泳がないのである。
せっかくのチャンスタイムに、噛み合うルアーが見つからない!
それでも騙し騙し、何とか試行錯誤して引いてみる。
すると、今度はルアーの回収に悩む事になった。
高い足場は問題ないのだが、足下の岩が斜めに海中に入っているのだ。
波のタイミングを見計らうも、時折、ルアーを岩にぶつけてしまう。
殆どルアーは飛ばないし、泳ぐ距離も僅かだ。
手返し良く、キャストを繰り返したいところだが、回収に時間がかかってしまう。
最悪の展開であった。
まったくもって、リズムに乗れないのだった。





気持的にはまだ、プラグの釣りをしていたい。
しかし、潔く、本命のジグに切り替える事にする。
手始めに結んだのは、110グラムのスライドタイプ、ロングジグであった。
まずは試しと投げてみると、やはり風にラインをとられ、なかなか沈もうとはしてくれない。
投げ込みたい潮があるのだが、仕方なく、風に邪魔をされない方向に撃ってみる。
ハッキリとした着底の感触が伝わり、間を置く事なくシャクリ始めてみた。
さすがに水深がある為、とてもしっかりとした抵抗を感じる。
まずは大きく跳ね上げてから、そこから様々なジャークを入れてみる。
何度かそんな事を繰り返していると、良い流れにジグが乗ったのだろうか。
更に、グッとした重みを感じる場所があった。
ここかもと、大きな振りでワンピッチを数回入れてみる。
イメージ的には、ヒラヒラと落としてみようと、その手をしばし止めてみた。
再びシャクろうとした時である。
大きく振り上げようとしたロッドに、全く何の抵抗も感じないのだ。
空を切ると言うのか、まるでスコンっと抜ける様な感覚となった。
おかしいなと、すぐにもう一度シャクってみると、今度は何事も無く、普段通りとなった。
それからしばらく、そんな事が頻繁に起きる様になって行った。
先程、少し止めた時に起きたのだが、その後は連続的にジャークさせている時にも起きる様になった。
浅いのか?と疑い、何度か試す様にやってみる。
すると、着底から僅かの所でも起きるのである。
水深はおそらく、30メーター前後はあろうか。
南紀においても、ほぼ同じ様な深さの場所で、ジグの釣りをして来てはいる。
同じく地磯である。
しかし、こんな感覚は初めてであった。
違う形状のジグに換えてみたが、回数は減ったものの、やはり何度か発生したのだった。




やがて完全に明るくなり、少し休憩を挟みながら釣りを続けた。
二人がいる場所に行ってみたくなり、怖々と磯を歩いて行く。
どこも、波飛沫で濡れていたが、そこだけ少し黒い部分が目に入った。
ここからは投げれない為、海に近いその黒い岩に足を乗せたその時である。
まったく唐突にヌルっと滑った。
今日はいつものスパイクではなく、耐油で来ているのだった。
傍から見たら、太ったおっさんが、朝の磯の上でダンスを踊っている様に見えただろう。
あわや、そのまま海にドボン!しそうになった。
海が違えば、苔も、岩もまた違うのだろう。
慣れた南紀には無い事に、大汗をかいて身で学んだのだった。



その後、潮位も増してきて、風と波も強くなって行った。
先程にも増して、頻繁にドカ波が足元を洗う様になって来る。
っと、ここで先輩より声がかかった。
今回、ご自身の釣りよりも、入門者の我々の安全を最優先に考えて頂いているのだろう。
彼はおっしゃらないが、私にはとてもそう思えたのである。
もっと、じっくりとジグをやりたいが、これ以上、ご心配を頂く訳にはいかない。
ほどなく、後片付けをし、磯を後にしたのだった。




今回、プラグの釣りでは全く、その状況に合わせる事が出来なかった。
南紀の比較的、足場の低い磯に合わせたそれらでは使い物にならなかった。
また、自身の高い足場での経験不足、技術の低さが一番の要因だろう。
回収時に岩にぶつけたルアーを見ると、フックはことごとく丸くなり、リップは折れ、アイも変形していた。
ちゃんと動かせないばかりか、大切なルアー達を傷めてしまったのである。
ショックも大きかったが、経験を積み、いつか上手くなりたいと気持ちを強くするのだった。
勿論、先輩は全く、何の問題も無く釣りをされてみえた。



また、ジグの釣りにおける、あの妙な感覚が気になったので、後日、詳しい方にお聞きしてもみた。
その方曰く、魚によっても、似た様な感覚を感じる事もあるとの事であった。
潮によっても、そうなる事もあるのだという。
ご同行頂いた先輩の見解では、実釣時、かなり強いウネリがあった為、ジグが上方向に持ち上げられたのではないかというもの。
自身の経験では、ジグにて魚信を得る事は、ほぼ全てがヒットである。
いきなり、ガツン!っと来るか、ゴツゴツっと来るか、もしくはフォール中にラインが走ったり止まったりだった。
僅かばかり、フワっとなった事もあるが、それはほぼ足下、水深10メーター強の場所である。
水深がたっぷりあり、斜めに引いて来る様な状況ではない。
もし、魚であれば嬉しいが、やはりウネリや波、風のせいだったかと思う事にした。
何故なら、掛けれなかった事が悔しいからであり、何故、掛からないか余計に複雑で難解になるからだ。
しかし、魚の可能性はゼロではない。
そして、その感覚を、いくら人に言葉で伝えようにも、その方が実際に経験しないと分からないだろう。
わざと回りクドク書いてみたが、要するに何度も経験しなさいという事だ。
そう、それは自身に言い聞かせている。
増々、ジグの釣りが面白くなって行く。
たまらないっ




それでは





























ある秋の釣り

10月11日、12日の日記







秋の海にとても苦手意識を持っている私です。
おそらく、去年の秋シーズンに苦しんだからでしょうか。






磯青物を始めた一昨年の秋の事。
今思えば、ツバスの当たり年であったかもしれません。
分からないながらも、磯に行けばこのツバスに出会う事が出来たのです。
プラグ、またジグと、投げるルアーに関わらずにヒットしてくれました。
そう、この、「ROCK'N'ROLL FISHING」、を始める少し前の事でした。
色々と試してすぐに結果が出る、そんな日々にどんどん気持ちは加速して行きました。
しかし、そんな日々は長く続く訳はないのです。
年が変わり、ショアからはツバスが消えてしまいました。
否、正確には、私には出会う事が出来なかったのです。



それから約一年もの間、私を含め、釣友の殆どもまた、ツバスと出会う事はありませんでした。
去年の春にはお祭り騒ぎがありましたが、私の様な普通のアングラーには、うまく釣れればハマチ、時としてメジロといった釣果であったと記憶しています。
個々人の魚のサイズに対しての尺度が違う為、出世魚の呼び名には微妙なニュアンスの違いがある事は否定出来ないかと思います。
それにしても、所謂、ツバスがなかなか接岸しない海であった様に思います。



しかし、今年はまた、そのツバスがショアラインに姿を見せている様です。
数度の大きな台風の通過後、各地でツバスの釣果の報告がこの私にも伝わりました。
かなりの大釣りをした友人もいたのです。
また、ツバスの釣果に加え、良型のシオ、また、時には単発ですがヒラマサの釣果も聞こえてきました。
まさに釣る人は釣っている。
そんな幸運な方々にとって、青物の秋らしい海が広がっていたのです。





そんな好況とは全く無縁の私。
自身が向かうその日には、まったくもって平和な海がそこにありました。
金銭的障壁が理由で、青物釣りにクールでいようとしましたが・・・。
やはり、どうにも心に火がついてしまったのでした。
前回の日記にも書きましたが、悔しくて悔しくてたまらないのでした。
もう、後先考えずに単独での出撃を決めたのです。
今回はその二日間の行動を綴ってみます。








日付が変わるその頃、南紀特急に点火する。
幾重にもわたる激走の日々にやつれてしまった愛車であった。
部分的なオーバーホールを施したのだが、それでも老いを止める事は出来なかった様だ。
三気筒の内、まっとうに動作するのはその二つのみである。
正確な圧縮を見ても、最早、2.5気筒となってしまった。
足りない分を無理矢理にターボの過給が埋めて行くのだ。
おそらく、そのシワヨセは大きく、静かに南紀特急を蝕んで行くだろう。
しかしながら、今の自身では何もしてやれないのである。

今回、自身が決めたテーマは、「開拓」、であった。
勿論、本心を言えば、喉から手が出るほどに魚に会いたいのである。
それならば、カタく、魚がいる場所に早くから入れば、その可能性はグっと高まるだろうか。
しかしながら、それで満足できない気難しい自分をよく知っている。
厄介なプライドなどはさておき、現実的にも、下手な私がそこで勝負など出来ないだろう。
我々には難解な決まった法則にのっとり、接岸し回遊する奴らは、もう嫌というほどルアーを覚えてしまっているのではないか?
単純に言うと、プレッシャーを感じているのではないだろうか。
明確な理由は何も無いが、無性にそんな気がしてならない。
出ても単発とはよく聞く言葉だが、はたして数が単発なのか疑問が残る。
それよりはむしろ、数は多いが、ルアーに反応し、更に喰う個体が、「単発」、なのではないかと思うのだ。
しかし、それとてただの仮説の一つであり、水中で実際に見た事実ではない。
真実に近づく為の、微々たる一歩をただ踏み出すのみである。






日の出まであと一時間という頃、目指すポイント近くに停車した。
私が知らないだけかも知れないが、そこでの青物のルアーによる釣果を聞いた事はなかった。
かなり前の事だが、航空写真とにらめっこをし、釣れない釣行の後に付近を見て回った事があった。
その時、とても気になっていたのだが、他に行ってみたい磯があった為に後回しとなっていた。
その後も、シラミ潰しに足を運び、とうとうあと数か所の開拓を残すのみとなったのである。
誤解の無い様に書くが、それは僅か狭い範囲の事である。

夜が明けて来た頃、一通りの用意を整えて向かった。
しばらく歩いて、やっと磯に降りるその場で足が止まってしまう。
ヘッドランプにうつるそこには、悠々とした潮の流れがあったからである。
この日は大潮であり、満潮まであと僅かという頃であった。
初夏に同じタイミングで立ち寄った時とはまるで様相が違ったのだ。
およそ、自身の胸から肩までの水位に見える。
とてもではないが、そこから先に進む気にはなれない。
この時、すでに空は茜色となっていた。
秋の大潮を計算に入れていなかった単純なミスである。
このままでは、せっかくのチャンスタイムに間に合わない。
すぐに引き返し、苦し紛れにそこから僅か先のポイントに向かった。





ポイント近くの駐車スペースには、すでに何台かの、「らしい」、車達があった。
他にも一見して餌師と分かる数台が停まっている。
おそらく、何かしらの釣果があるのだろう。
気持ちは乗らないものの、何とか竿を出したい一心で歩いて行った。
慣れたルートを進む内に空は完全に明るくなって行く。
やがて先端まで来ると、おそらく未明時より投げきっていたのだろう。
少し休憩をとっているアングラーの姿が見えた。
迷惑になってはと、攻め慣れたそこから離れた場所に向かった。
結果的には、二時間ほど粘ってみたが何も無かった。
遠くに見えるアングラー達もまだまだ諦めていない様子である。
一人、また一人とポイントを後にするのを見て、様子を見る為にそこに戻ったのだった。

そこで、その一人とお話させて頂く。
今日は朝一から何も起きず、隣の方が沖でワンバイト得たが乗らなかったとの事だった。
おそらく、ツバスではないかと。
数週にわたり通い続けているが、大釣りの後は回を重ねるごとに厳しくなっているそうだ。
果たして、群れの数を抜かれているからか、プレッシャーによるスレなのかは分からない。
どちらにせよ、何人もが投げていても厳しいという現実なのである。
しばしの間、釣りの手を止め、アングラー達の釣りを眺めていた。
皆、実に上手い釣りをされている。
しかし、何も起きないまま時間だけが過ぎて行った。



とうとう、そこには自分だけとなってしまった。
時間に、何の制限も無い自身はそれでも気にしない。
確かに、朝の貴重な時間帯は特別なものではある。
もしかすれば、また次のチャンスがやってこないかと竿を振り続けて行くのだった。
目の前の海はまるで湖の様である。
またしても、すこぶる凪であった。
風も無く、目に見える潮の流れも無い。
すると、海面の様子がとてもよく見えるのであった。
目の届く範囲において、水中にはこれっぽっちのベイトも見えない。
また、いないのかと自身の不運を嘆きそうになる。
伏し目がちに目線を沖に移した時、わずかな変化を捉えた。
沖合、およそ300メーターほど先であろうか。
さざ波の様な違和感を水面に見る。
その、わなわなとしたザワメキは少し動いている様に見えた。
おそらく、何かの魚がうわずっている様である。
ボラだろうか・・・。
そう思った矢先、ボシャ!っと一つの水柱が立った。
それを皮切りに水面が爆発して行く。
そう、ナブラが起きたのだ。

水飛沫の迫力はそんなには無い。
魚の頭が見えないので、それだけではそのサイズをうかがい知る事は難しい。
それでも、過去の経験から、それほど大きなサイズには思えなかった。
おそらく、幸運なアングラー達が手にしているツバスであったかもしれなかった。
しかしその時、突如として起きたソレを嬉しいとは思わなかった。
とても苦手とする感じに思えたからである。
理由は無いが、一気にトーンダウンして行く自身を感じた。
結果として、ナブラの主は全く無視する事にした。
何も無かった様に、スローなテンポにて誘い出しを続けて行った。
やがて、あれほど遠くに見えたベイトのざわめきが、投げれば届く距離まで寄って来る。
しかし、水面を割る、奴らの姿はどこを探しても無い。
おそらく、先のナブラである程度、空腹を満たしたのだろうか。
もしかすれば、あと数時間待てば再びその時は訪れるかもしれない。
しかし、今日の自身にそれを待つ気は無かった。
腕時計を見ると午前11時前だった。
潮汐表上での干潮はもうすぐそこである。
今日の目的はあくまでも開拓であるのだ。
急いで来た道を戻り、朝のポイント向かった。






しっかりと潮が引いたとはいえ、進むべき道の水嵩は自身のスネほどまであった。
ザブザブとその道を進んで行く。
完全にあらわとなった岩の上を進むが、一番高い部分にもフジツボ、貝などがビッシリと付いている。
よくは分からないが、大潮の干潮であるからこそ、露出するのではと思った。
所々に背丈ほどの深さのタイドプールがある。
数多くの生き物たちがそこに取り残されていた。
一見して、ベイトとは思えない種族ではあるが、この磯が生命豊かである事の証である。
数か所、歩きにくい場所を越えて行くと、やっと潮の当たる海が見えて来た。
航空写真で見たよりはずっと、開けた感じに思えた。
やがて、そこだけ不自然な部分が目にうつる。
小高いそこに、脱ぎたてのウェーダーが置かれていた。
更に進むと、目標としていた岬状の磯に釣師の姿があった。
道具を見るに、ほぼ、イガミ狙いに間違いなさそうである。
初老の釣師が竿を二本出されていた。
とても狭い立ち位置が故、残念ながら、これにて釣りは不能となった。

























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おそらく、見覚えのある方もいらっしゃる事でしょう。
私の開拓など、その言葉がイメージする様なハードなものではございません。
原生林を行くとか、絶壁を降りる等々、皆様が日常的に行かれている様な磯とは程遠いのです。
それでも、まだ見ぬ自身のポイントを探して歩きます。
いつか、何かの海況、タイミングで、そんな記憶が生きる事を願って。




せっかくなので、とてもサラシが目立つ場所に立ってみた。
あわよくばヒラでもと、小型のミノーを通してみるが何も起きなかった。
少し粘ると、結構な波が打ち寄せ、頭からしっかりと浴びてしまった。
凪の海ではあるが、浅く、また複雑な地形の為か、波が立ちやすいのだろう。
意外にも険しい海の表情を身を持って知る事となった。
一通りの観察が済んだので、再び潮位が上がる前に撤収する事にする。









大きく移動しながら、付近の海を見て回ったが、どこも似たり寄ったりの感じに見えた。
どうも、最近のベイトの動きが分からない。
私の釣行時は全くベイトの姿が見えなくとも、その一日後、二日後にはベイトだらけの海であったりする。
先輩、釣友からの報告を頂き、今の自分には居ずにその状況を知る事が出来る。
有難くも、とても恵まれた環境である。
話しが逸れてしまったが、何に影響されているかは不明だが、それ程、敏感に魚達は動いていると言えるだろうか。
まさに、青物は運であるとの所以を感じるのだった。


疲れたので、少し遅めの昼食をとる事にした。
ガッツリ食べたかったので、海の近くの台湾料理店に向かった。
ランチセットをたいらげると、猛烈な眠気がやってくる。
お腹が痛くなっても大丈夫な様、キレイなトイレのある場所にて眠る事にした。
一度寝るとなかなか目覚めない私、起きたのは19時を回った頃だった。
車の外に出て伸びをすると、頬にあたる風はそよ風だった。
空を見上げる。
雲に隠れてはいるものの、綺麗な満月がうっすらと顔をのぞかせていた。
勿論、海はとても穏やかである。
この様な状況は意外と無いもの。
これならば、初心者の私でも安全に立てそうに思えた。
少し怖いのだが、久々に夜の磯に向かう事にした。







ポイントに着くと、真っ赤に光る四つの赤い目玉が私を見る。
分かっていてもビクっとしてしまう。
ヘッドライトをあてると、二匹の可愛い子狸がそこにいた。
ガサゴソ!!
ウワァ・・・っと右隣に目をやると、今度は釣師が座ってみえた。
こっ、コンバンワとご挨拶する。
餌の夜釣りをしにみえている方だった。
快く、少し離れた場所に立たせてもらえる事が出来た。
ビックリしたが、一人と、二匹の狸と一緒の釣りだ。
勇気百倍である!
よし、アオリちゃんおいでっとまずはフルキャスト。
底が定かではない為、カウントダウンはほどほどにしてシャクリを入れてみる。
沖に向かう潮にエギが馴染み、途端にぐぅーっとした重みを感じる。
おそらく、しっかりと静止している感じだ。
そこに更に重みが増した。
きたかも??
フンっと竿を振り上げると、ボスっとした感触。
やった! 一投目から乗りました。



しかし、その潮では再び抱いてくる事は無かった。
うーむ、なかなか難しい。
どこか、他に良い部分は無いかと、そのままの立ち位置から探ってみる。
シャクリとフォールを繰り返し、沈み根の位置、そして間隔を計って行った。
多少の根がかりは仕方ない。
うまくすれば、ちゃんと外れて回収出来るので恐れずに通して行く。
どうやら、少し先には根が二つ、並んで沈んでいる様に思えた。
おそらく、その間隔は約1メーター強といった感じか。
その沖にキャストし、間を通してみる。
フォール中、パチンっと僅かな感触を得た。
どうやら、アオリがいる様である。
少し動かすと、元気に持って行ったので竿を立てる。
トス!っと乗った。


二投目もすぐにアタリがあった。
アオリが群れている様である。
さすが磯といった感じに興奮した。
しばし、入れ食い? 入れ抱き!?を堪能した。




しばらくすると全く反応が無くなる。
どこへ投げても、フォールするエギが不安定に漂っている感覚なのだ。
しばし粘るが、どんどんと根に触れる感触が増えて行った。
殆ど沈ませる事なく、頻繁に岩を擦るのである。
何の事は無い、楽しんでいる間に結構、潮位が下がって行ってしまったのだ。
こうなるとさすがに厳しい。
そこで、かねてからやってみたいと思っていた、夜磯のルアー釣りをしてみる事にした。
とはいえ、今夜は大きなプラグ、ジグなどはもちろん持って来てはいない。
バッカンの中を見ると、漁港で遊ぶいくつかのルアーが転がっていた。
そのまま、アオリの道具に結んで行く。
ぴょいっと投げて、少し沈ませてみた。
おそらく、いれば魚達は見ているだろう。
殆ど妄想であるが、それを意識してアクションを入れてみた。
ぐぐん!!
来た、本当に来ました~






















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うほ!
金魚みたいな赤い魚が釣れました。
アカマツカサの仲間だったかな?

やったね!


















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そんなに大きくない魚ですが、丸々としています。
アタリは明確だし、適度に引くので楽しいです。
もう一匹だけ追加して満足しました。
帰宅後、煮付けにして頂きましたが、充分に食用となりえる感じです。
私は美味しい魚だと思いました。





















P1010147

ああ楽しかった!
良いお土産ができました。














磯からあがり、またもや眠りについた。
もう、いくらでも寝れる感じである。
次に気がついたのは、明朝6時頃だった。
またしても寝坊である。
すぐにポイントに向かったが、どこも、イガミ釣師で一杯であった。
きっと、沢山釣れているのだろう。
かなり厳しい場所にも、沢山の道具を持って入ってみえるのである。
少し移動し、Taka氏の好きな場所に行ってみた。
幸いな事に誰もいない。
しばらくキャストしてみたが、青物からの反応を見る事は出来なかった。
昨夜の釣りに、妙に釣り欲が満たされてしまった。
何か所かのポイントを見て回り、少し立ち寄った漁港にてアオリを一杯追加。
少し早いが、帰路についたのだった。









P1010153

この二日間の青物釣りにおいて、久々に下記のタックルを使用してみた。


Rod    MC Works RAGING BULL 100XF-1
Reel    DAIWA 10 SALTIGA 5000


実のところ、新型ソルティガは今まで、半日だけしか使っていなかったのである。
苦労して、やっとの思いで購入したにも関わらず。
それは何故か?
その半日の使用では、主にジギングをやっていた。
潮の緩やかな水深30メーターほどの場所にて、約70グラムほどのジグを用いていた。
釣りが終わり、水洗いしていた時に気付いたのである。
明らかな異音、そして巻きの違和感であった。
次の日、購入したショップに行って、展示品の同型と比べてみた。
スタッフの方と比べてみたが、やはり大きく違うのであった。
すぐにメーカーに送り、確認して頂く事になった。
メーカーの回答は、「違いはあるが、異常ではなく想定範囲内である」、との事。
詳しい内容は割愛させて頂くが、こうして再び使用するまでに約2か月を要したのである。
誤解の無い様に言うと、メーカーには大きな落ち度は無い。
おそらく、過剰な期待を持ち過ぎた、私の我が儘であったと思う。
思い込みの激しい私は、実は一度このリールを手放している。
返却後、一度も実釣で試す事無く。
そして、S社のハイエンドモデルのデッドストックを購入した。
しかし、運命の悪戯であろうか、ラインを巻く事なくハンドルが回らなくなってしまった。
それはただの消耗品の劣化が原因であるのに違いはない。
しかし、その時の精神状態では冷静にはいられなかった。
結果、再び我が手に戻る事となったのである。
今回、二日間の釣りではかなり酷使したつもりだ。
あくまでも私の感覚であるが、まるで全くの別ものに生まれ変わったかの様であった。
そのフィールはシルキーさを増し、使う程に馴染み行くかの様に感じたのである。
私の無理な我が儘にも、真摯な対応をして下さったショップスタッフ、そしてメーカーの方々。
また、実際に整備、調整をして下さったメカニックの方に感謝しています。
その気持を込めて、タイトル画を同機のものといたしました。

それでは











































































秋磯

10月4日、5日の日記







ここ最近、色々と苛立つ事の多い毎日を過ごしています。
経済難の中での南紀特急の故障。
それも、さらに苛立ちに拍車をかけていました。
そんな中、Taka氏より釣りのお誘いを頂きました。
本当に有難いです
前回、急な仕事が入り、途中で帰宅となったのが悔しかったと氏は言います。
今回はしっかり仕事を調整し、万全の態勢で釣りが出来るとの事。
幾つかの釣りの道具を持って旅立つ事にいたしました






私にとっても、約20日ぶりのロックショアの釣りとなる。
先輩方から海況は聞いてはいた。
しかし、私自身が通っていないから、身で海が分からないのである。
通い続け、それで得た物をデータと照らし合わせて予想する。
そんな自身の方法がとれなくなっていた。

無いモノは仕方がないので、釣行土壇場になって調べる事も止めた。
情報が全く無い訳ではないのだが、それを信じ、釣れなかった時にダマサレタと感じるのは好きではない。
ダメだった事を誰かのせいにして逃げたくないからである。
よって、今回はシンプルに行く事にした。
秋の青物シーズンを楽しもうと。
あわよくば、ヒラマサに出会えたら嬉しいなと。
気ままに秋の海を満喫したかった。





いつもながら、Taka氏の運転で南紀までの道をひた走る。
道中は話しに花が咲き、気が付いたら県境を過ぎている感覚である。
この日もすぐに新宮の街に入ったのだった。
それからしばらくして、安い氷を買って氏の大型クーラーに詰めて行った。
そんな事をすると釣れないよと半分本気のジョークで笑う。
おそらく、よくあるワンシーンではないだろうか。
南紀に到着し、早く寝なければならないと思いつつも話が済まない!
これから向かうポイントがなかなか決まらないのだ。
色々と悩んだのだが、最終的には沖磯を選ぶ事にした。
氏の、「物凄い」、タックルの初デビューに相応しいという事が理由であった。
勝算など気にせず、気楽に竿を出すのも面白い。





渡礁後、準備をしながら海を見る。
今日は小潮である。
潮位は干潮にほど近く、波も無く全く穏やかな海が広がっている。
とはいえ、意外にも潮はよく動いている様に見えた。
まず、準備を終えた私から立ち位置に向かった。
最初に結んだのはやはり好きなポッパーである。
ウォーミングアップのつもりでゆっくりとキャストした。
スルスルとラインがスプールから出て行く。
しばらくすると、硬くなったラインの抵抗で、飛んでいるルアーが失速して着水した。
私から、約50~60メートル先まで到達した様だ。
早速、ゆっくりとしたテンポにてポッピングを始める。
目に見える範囲ではよく潮が流れている。
しかし、水中はどうだろう?
そんな事を考えていた時であった。
ドバン!!っといきなり水柱が立った!
ハッとして聞いてみる・・・。
しかし、ラインの先に獲物の手ごたえは無い。
再びアクションを続けて行くとその理由が分かった。
不穏な空気を感じる。
っと、水面から黒い三角のそれが浮き上がった。
サメであった。
どうやら、ポッパー好きのサメを呼び寄せてしまった様だ。
気持ちが急速に萎えて来る。
すぐにペンシルに交換してキャストを再開して行った。
サメはどこかに消えて行ってしまったが、魚からの反応も無いままであった。
眼下に広がる海には、浮きグレの群れしか見えていない。
とても厳しいスタートとなった。




Taka氏は二刀流のタックルで挑んでいる様だ。
すこぶる強力なそれでは大型のペンシルを、また、少しライトな方ではミノーをといった選択である。
私はといえば、不精な性格であるので、一つのタックルで色々とやっている。
個性が出る部分だろう。
その後は互いに、手を変え品を変えて投げ続けて行った。
しかし、全く反応を見る事が出来ない。

そこで自身は気分転換にエサを取り出した。
カワハギ仕掛けをそっと沈ませてみる。
するとどうだろう、着底を待つ間も無くアタリが出るのだ。
これは楽しい!
ギュンっと、ヒラ竿の穂先が入ったので鋭くアワセてやる。
ググググッ、凄いパワーで突っ込んで行く。
思わずヒザのバネを使って応戦する。
何の魚かは分からないが、カワハギでないのは間違いない。
ロッドをバット部分から絞り込む程の力を見せる魚。
懸命に応戦したのだが、足元の根に入ってしまった。
少し待っていると、グングンっと動きだし根から出た様であった。
今だ!と一気にリフトさせようとするとパスっとテンションが途切れてしまった。
PE2号ラインの高切れである。
これは面白い!
急いで仕掛けを作り直し、再度、投入するとまたすぐに当たった。
しかし、これもファイト中に切れてしまった。
あまりにおかしく思い、ガイドを確認して行くと案の定である。
その一つにクラックが入っていた。
今度はジギング竿に結びやってみる。
アタリは分かるのだが、それを掛けるのがとても難しい。
仕掛け投入と共に喰う、まさに入れ食い状態なのだが・・・。
何とか工夫してやっていると、ポツポツと小型の磯魚が釣れる。
主にベラの類だが、そのサイズには驚いた。
尺はあろうかという魚が釣り上がってくるのだ。
逃がそうとすると、底物師が欲しいと言う。
どうやら、魔物の餌にするつもりの様だ。
魚には可哀想だが、そのロマンに捧げる事にした。
しばらくエサを楽しんだが、アタリが乏しくなって来たので竿を置いた。
やはり、エサで釣れる魚達も潮にはとても敏感な様子である。

すると一人の初老の底物師が竿を曲げた。
すぐに浮かせ残念そうな表情を見せる。
「ヒブダイやあアカンわあ」、っと苦笑いしていた。
針も飲まれてしまったと嘆いていた。
欲しかったらあげると言ってくれた。
そのままリリースしても長くはないだろう。
有難く頂く事にした。
見るとヒブダイではない様に見えた。





















P1010129

多分、イラという魚だと思います。
40センチ以上あるんですよ。
口からワイヤーが出ています
美味しく頂く為にすぐに昇天の儀式をいたしました。
帰宅後、煮付けにして頂きましたが、とても美味しかったです。
綺麗な白身であり、その感じはタラによく似た風だと思いました。







少し休憩を挟み、またショアジギングに戻る。
Taka氏はずっと投げ続けていた。
しかし、自身はどうにも集中力が続かないのだ。
通えば通う程に、この様な悪い感覚が芽生えてくるのだろうか。
いわゆる、釣れる気がしないというものである。
頭では分かっているのだ。
投げ続けるならば、何が起きるか分からないという事を。
海の中にルアーが無ければ、その僅かな可能性さえも放棄した事となる。
それを分かっていて尚、どうにも気力が起こらない事に苛立つのだった。
最近、釣りとは自身の軟弱な精神との闘いであると感じている。

見える範囲には全くベイトがいなかった。
ミノーを巻いてすら、オキザヨリ、ダツのバイトも無い。
池の様な海が広がっているが、それでも潮だけはよく動いていた。
午前11時、自身の引き出しの全てを使い果たした。
何をやってもダメなのである。
こんな時、大きな気分転換の為に眠る事にしている。
勿論、短時間の眠りで身体が休まる事は殆どない。
しかし、不思議と精神的にとても軽くなるのだ。





小一時間ほど眠りを貪っただろうか、眠気眼で、Taka氏を見ると真剣な顔で投げていた。
聞けば、全く休む事なく振り続けていると言う。
この気持ちが欲しいと心から思うのであった。
それから、磯上がりまでの三時間、投げに投げ倒したが何も起こす事は出来なかった。
あえて、私が普段、口にしない様にしている言葉がある。
「魚がいない」という台詞だ。
深い海の中の事、勿論、釣れないから魚がいない訳ではない。
いないかもしれないが、それよりは自身のルアーでは誘い、喰わせる事が出来なかったと思う様にしている。
しかし、この日、さすがにその言葉が頭に浮かんで来た。
Taka氏はずっと休む事無く、キャストを続けてみえたのである。
自然に互いの口から洩れた。
それは思いやりであると信じたかった。





磯から上がり、すぐに車に道具をしまって行った。
ここで、この日の釣りが終わるならば、おそらくは時間をかけて道具を整理したであろう。
しかしながら、自身も、また、Taka氏も全くそのつもりは無い様である(笑)
車に積め込むだけの最低限の整理に終わった。
とり急ぎ、空腹を満たす為、街のファミレスに向かった。
すぐに食べ終わり、一服しながら話す。
互いの口から自然に言葉が出た。
「アソコ行こか!」
日中にはまだ汗が流れるほど暑い日もあるが、やはり秋は深まって来ているのだ。
陽が沈み行くのがとても早くなって来ている。
満腹で苦しいお腹を抱かえて磯にダッシュするのだった。
氏の名誉の為に書くが、お腹を抱かえたのは、Rockbeachだけだと思います。

十分ほどで先端に着いた。
早速、マシンガンの様にキャストを連射して行った。
狙いも何も無いのだ。
扇状に届く範囲に全て投げて行く。
私はこの時、あえて苦手としているシンキングペンシルを用いた。
着水すると穂先を上げ、全力でハンドルを巻き続ける。
水面をスプラッシュを上げながら高速で引くのである。
確かにとても有効な誘いであるのだが、普段は殆どしない釣り方である。
もう、どうしても魚の反応を見たかったのだ。
しばらく投げ続け、やっと殺気が消え始めた頃であった。
沖からずっと引いてきて、足元から張り出す沈み根に差し掛かった頃であった。
いきなり水面が割れ、ゴン!っとロッドを引っ手繰られる。
あまりに突然だったので、何も出来なかった。
水面に生まれた大きな波紋だけが残された。
次の瞬間、Taka氏に向かって吠えていた。
しかし、氏は爆笑している。
どうやら、私の表情が鬼神の様であったらしい。
そんなの自分じゃ分かりません!
笑いながら氏がミノーを投げると、ゴン、ゴン!っと二回当たった。
しかし、うまく乗らないのだった。
その後、真っ暗になるまで投げ続けたが、二度とは出なかったのである。





磯から上がり、ほとんど休む間もなく次の釣りに向かった。
今回は秋イカをのんびりやってみたい気分でもあった。
磯に立っているのだから、アオリも磯で楽しめば良いはずである。
しかし、私は結構、漁港での釣りも好きなのだ。
何といっても、そのお気軽さが良い。
食後の軽い散歩といった雰囲気が心地良いのです。
向かったのは、あえて激戦区の堤防であった。
入れ替わり立ち代わり、一日中多くの人に叩かれ続けている所。
なかなか、イージーには抱きついてくれない。
キャストを開始してすぐ、テンションフォール中にビュンっと持って行かれた。
こういう感じでは、とても小さいイカの時が多い気がする。
それ以降、しばらく全く反応が無い。
あれこれと、持てる引き出しを開けて誘ってみる。
どうやらこの日、ジャーク中に乗せるのが自分に合っていた様だった。
エギを動かしている最中にバチっと来て乗って来た。
まるで魚のヒットの様であった。
まず、300gくらいの小イカが釣れた。
すぐに同じ風にヒットする。
グっと竿がしなると、あの気持ち良い感触が伝わって来た。
グイングイン~っと穂先が上下する。





















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700gは無い位かと思います。
久々に気持ち良かった一杯。
やったね!












その後、すぐに潮が緩んでしまった。
しばらく粘ったが、二人とも全く反応が無くなる。
明日に備えて納竿する事にした。
とてもお腹がすいたので、軽く夜食をとる事にした。
パワフルなTaka氏は二人前位の弁当を購入してみえる。
寝場所に移動し、まずは乾杯をした。
翌朝、運転する事の無い私はワインボトルを買った。
色々と話す内に、すぐにボトルがカラになってしまった。
気持ち良く就寝Zzzzzz







翌朝、4時の目覚ましで起きるも、二人とも二度寝してしまう。
確か、氏の寝息が先に聞こえた気がした(笑)
まっイイかっと再び落ちる。
次に目が覚めたのは、6時を大きく回った頃だった。
急ぐ事なく、コンビニで缶コーヒーなどを買う。
前日、あまりにベイトの姿が見えなかった為、大きく移動してエリアを変えてみる事にした。
磯に着くとすでに何人かの方が投げてみえた。
邪魔にならない様、更に歩いて誰もいない場所に向かった。
おそらく、二時間ほど投げ続けたろうか。
やはり、ここにも見えるベイトはいないのである。
全くもってアタリも無い。
やがて、何人かが帰られたので、空いた場所に移動した。
投げ始めるとすぐ、一人の方が磯際で竿を曲げている。
何かを外そうと一生懸命に見えた。
しばらく見ていると少し竿が動いている。
不思議に見ていると、どうやらその先に魚が掛かっている様だ。
ほどなくして、40センチを超えるナイスなシオが引きずり上げられた。
とても羨ましく思えた。
しかし、我々には全く何も起きない。
もうすぐお昼となる頃、諦めて納竿としたのであった。




僅かなものかもしれないが、久々の磯の釣りにかなり感覚が遠く感じた。
いったい、今までどれだけのキャストを繰り返したか分からない程ではあるが、
少しでも間隔をあけると、何かぎこちない感じがするのであった。
もともと、釣りが下手だからであろう。
釣れないがとても楽しい二日間であったが、それにも増して悔しさを噛みしめる事となった。
帰り道、たまらなかった。
その気持ちは他の何でも掃えない。
そう、釣りでなければ。
近い内に必ず戻る、そう強く決意するのだった。



それでは















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