1月26日の日記


ここ最近、どうにも釈然としない毎日を過ごしていました。
何か理由を探さないと、釣りに行けない日もありました。
釣りへの情熱がさめた訳ではない様ですが・・・
私を知っている方から見たら、それは明快な事かもしれません。
大きな人生の悩み同様、自身ではなかなか気付かない。
ぼんやりと考える日が続きました。

釣れないから、釣りたいから、色々と調べたりお話も伺いました。
接岸している、釣れているという話にも敏感になって行った。
ベイトは何だ!? パターンは? ジアイは??
いつしか、ルアーケースの中は釣れるというルアーで一杯になっていました
それなりにですが、自身の経験やデータから立つ場所を決めてはいました。
しかし、自らの良くない記憶や、定説が邪魔をして集中出来ない時も多かったのです。

おそらく、現場の生の情報を知る事は大切な事でしょう。
ただ、私の様な不器用で難しい人間には、それがネックにもなってしまう。
どんどん限定的になり、固定観念の様な、自身の想像の範囲内でしか見れなくなってくる。
私にはそんな風に思えました。
今回の釣行は、そんな自身の殻を破る事から始めます
完全にリセットする事は難しいですが、迷ったら原点回帰!
何も考えず、真夜中に南紀特急に喝を入れました。



南紀到着は午前2時半。
今はほとんど風は無いが、予報では明け方より北、北西の強い風が吹くという。
仕事が長引き、おまけに胃腸風邪っぽい。
身体が疲れているせいか、いつもにも増して強い睡魔がやってくる道中であった。
気持ちも新たに、今回は初めての磯に立ってみるつもりだ。
ゴールデンタイムも大切だが、暗闇での開拓は安全ではない。
日が昇るまでしばらく眠る事にした。

午前6時20分に起床。
ポイント付近までしばし、ゆっくりと車を走らせる。
今日の天気予報は正解みたいだ。
予想通りの風が強く吹いている。
夜間、風が収まっていたからだろうか、風は強いがまだ波もウネリも殆どない。
ほどなくしてポイント近くの駐車場に到着、さっそく準備を整えて行く。
前回は寒くて釣りにならなかった。
昔買った、防水ではない防寒着を今回は用意してきた。
波を被らなければ、コイツはかなり暖かい。
立ち位置は限定されるが、背に腹はかえられずに着込みマス。

初めてのルートを行くのはドキドキする
ゆっくりと、また、行っては引き返しを繰りかえす。
しんどいのだが、気持ちが前に進んでいるのでそう苦ではない。
痛めてしまった右手首はまだ治らない。
岩壁のくぼみに手をかけ、片腕だけに体重をあずける場面では鋭く痛みが走る。
それも我慢すれば済む事だ。
何より、今の自身に必要なのは、この新鮮な感覚なのである。

一歩一歩と確実に歩み、約20分ほどで目標の場所に着いた。
高場に荷物をおろし、まずはゆっくりと海をながめる。
潮位は高く、足場から海面まではわずかしかない。
風は強いが、相変わらず波もウネリも殆どないので安心して立てそうであった。
少し隣にはグレ師が一人。
ルアーマンはいない。
懐かしい光景にニヤつきながらタックルを組んでいく。
想像していたよりは浅くはなかった。
ただし、けっこうな沈み根があちこちに見えている。
もし、魚を掛けたら怖いな・・・。

さほど大きくない魚でも、逃げれる場所があれば凄い抵抗をした事があった。
経験ではなく、知識としてドラグの設定については教えて頂いてはいた。
強すぎても、弱すぎてもダメであると。
むやみに魚を怒らせてはならず、魚の行きたい様に走らせてやる事も必要であると。
しかし、殆どファイトの経験が無い自分には、この、絶妙なドラグのさじ加減が分からない。
根に突っ込む、強引な奴の唯一の経験はドラグ値10キロの時しかない。
それでもギリギリと出されたが、何とか止める事が出来た。
だから今回も約10キロで行ってみる。
(※ロッドメーカーが推奨するドラグ値以上にかけています。自己責任でいたしております。)

去年、まだ寒い時期から使い始めた、ペンシルを結んでみる。
サイズは18センチ。
魚がルアーに出ても、どうしてもフッキングがうまくいかなかった。
私の腕では、ツバスをうまく掛ける事が出来なかったのだ。
いつしか使う事が少なくなり、家で眠っていた。
足元を見ると、約7センチ程のトウゴロウの様な小魚が見えている。
しかし、どちらも今回は気にしない!
釣る為にと、考え模索して行く中で混乱してしまったのだから。
自分が信じていた事をやるのみである。

よし!っと気合いを入れて磯際に立つ。
沖にわずかに見える潮目に向かってフルキャストする。
潮目までは約60メートル、何とか潮目の向こう側に届いた。
レイジングブル、ソルティガZ6000のしっかりした手ごたえが手首にかかる。
何をしていても痛いのだとグッとこらえた。
遠くに僅かに見えるルアーを確かめ、命を吹き込んで行く。
釣れなかった過去のあの日々、コイツを動かす練習に明け暮れていた。
体は今も忘れてはいなかった。
頭で描いたイメージ通りの動きを繰り出して行く。

今まで、釣れるというルアーを沢山買ってきた。
しかし、その殆どを上手く操る事は出来なかった。
同じルアーで両隣のアングラーが掛けている、それでも自分にはヒットが無かった事もある。
条件が良く、魚がいればそれでも釣れる。
しかし、なかなかチェイスしない、口を使わない状況で、はたして食わせる事が出来ないから、魚がいなかったと諦めていた自分もまたいたのだ。
ルアーとの不思議な一体感を感じながら回想していた。
しばらくキャストを続けたが、少しレンジを変えてミノーに交換してみる。
チェイスしている奴がいないのか確認もしたかった。
しかし、数投で違和感を感じた。
どうにも、今の潮にうまく馴染んでいない感じがするのだ。
再び、元のトップに戻しキャストして行く。

依然として風は強く、まともに風を受ける側では波立ってきている。
一見すると、そちらの方が良さそうな流れが差している。
しかし、時折、波が磯を叩き、派手に波飛沫をあげている。
防水ではないウエアで立つのは厳しかった。
不思議と目前の海は凪いている。
多少だが動いていた潮が更に弱くなってきた。
潮目も見えなくなった。
よく釣られる方の殆どが、荒れている時の方が釣れるという。
確かに、荒れている時にチェイスを見たり、バイトを得た事もある。
しかし、どうした事か私が釣れるのは凪の日が殆ど。
おそらく、荒れると怖くて集中出来ないから、荒れが嫌いなのもあると思いますが。
だから、自分的にはあまり凪が良くないとは思わない。
気にせず、もくもくと良さそうな動きをルアーに与えて行った。

どの位の時間が流れたろうか。
アクションさせる事に集中していて感覚が無い。
ここには、ボイルもナブラも何にもない海が広がっている。
その方が嬉しかった。
あっちに沸いたとか、こっちにナブラが出たとか、翻弄されまくって振り回わされて疲れた。
素早く磯の上を駆け巡り、一瞬のチャンスにピンポイントでルアーを打ち喰わせる。
そんな凄い事は出来なかったし、ナブラの中にルアーを入れる事さえ出来なかった。
この時期、沸かないと釣れない・・・。
そんな話もよく聞き悩んだ。
沸かなくても釣れる方法が無いか探したが、残念ながら結果は出なかった。
悩む様になってはじめて、元々、ナブラになる相手を追って釣りをしていたのではないなと、ある日思い出したのである。


何度も何度も投げては寄せてを繰り返し、無心になっていた頃、転機は訪れた。
沖から丁寧にアクションさせてくる。
海面からルアーの頭を出し、派手にスプラッシュをあげさせる。
グンっと穂先をあおり潜らせる。
潜らせて豪快にジャークを入れ、間髪入れずに小刻みにヒラを打たせ、一瞬止める。
速く、遅く、強く、弱く、一つ一つを大切にこなしてくる。
目前10数メートル程までルアーが近づいてくる。
ちょうど良いラインの角度ができたので、ゆっくりと絡む様にドッグウォークを入れてみる。
5メートル程泳がし、ポーズを入れた瞬間!
ルアーの後ろで水面が大きく盛り上がった。



一瞬、背中がゾクっとなった。
やばい・・・。



すぐにアクションをいれた直後である!
竿先、約1メートルの所の事であった。
何もなく18センチのルアーが忽然と消えた!!
ゴボっとか、バシャっとかの音、飛沫も何もあがらない。
まったく、一瞬にして音もなく消えたのだ。
実際には消えてから一秒もたたない間の思考である。



!!!!!



リールハンドルを持っていた手を、ロッドに持ち替える間の一瞬の隙を突かれた。
凄まじいパワーで両手ごと引っ手繰られ、上半身を、「くの字」、にされてしまった!!
そのまま、竿を真っ直ぐにされ、恐ろしい音でスプールが唸りをあげ始めた。
体を起こす事さえ出来ない。
ぐっと竿を引き起こしたい、せめてっ・・・アワセだけでも入れさせてくれ。
淡い想いは無情にもドラグ音にかき消されて行く。




「あがっ!・・・」




あまりの力に自然に声を出してしまうRockBeach
3メートル程出されたろうか、少しだけ奴の引きが弱まった。
それでもなお、凄い力で引きずられている。
ロッドエンドを下腹部にあて、右手をグイっと起こしかけた瞬間、
再び、つんざく様な突っ込みが始まった!
負けるかぁ・・とリフトさせようと力を入れると、ガンガンガン!!っと叩く様な締め込み。
四度目に強く締めこまれ、ガクン!!っという衝撃と共にもんどり返ったのだった。
痛ってえな・・・・・・。
フックが奴を確実に捉えていなかったのだろう。
フックアウトである。
だがしかし、いつもバラした後に感じる、猛烈な悔しさは感じなかった。
完敗である。


あまりの負けっぷりに爽快感すら感じていたかもしれない。
ちなみに、ST56 3/0は全く伸びてはいなかった。
完全な作戦ミスであった。

私の体力では、足元で食った相手に対し、ドラグ10キロではのされて何も出来ないのだった。
おそらく、引きずられて、耐えていた間に反撃を開始しなければならなかったのだろう。
前回、同じドラグ値で運良く獲れた時とは状況が違った。
足場の高さが決定的に違うのだった。
もう少し楽に、ラインが出てくれないとならないのかもしれない。
同じセッティングでも十分に戦える人間はいるとは思う。
しかし、体格も体力も人それぞれなのだ。
やみくもに、大物相手のエキスパートの経験を、鵜呑みにしてはならない事を身で学んだのだった。
ファイトの経験を沢山積む事が出来れば良いんですがね・・・。
いかんせん、めったにお魚さんに出会えないので

その後もしばらく粘ってみたが、再び魚からの反応を見る事は無かった。
自分らしい釣りに再び戻り、こうして魚とつながった事は本当に幸運だったと思います。
何故か分かりませんが、ただ海で腰かけているだけなのに楽しかった
何か少しだけ前に駒を進めた気がしました。
今回はエギングもエサも一切ナシ。
美味しいご飯食べて、久々に釣り具を買って帰りました。

それでは