11月14日の日記





無性に釣りがしたくなり行ってみる事に。
実釣時間、経費も限られている為、比較的に近場に向かう事にしました。
お恥ずかしながら、地元である三重こそ、私にとっては未開の地ばかりです。

今回も、お世話になっております、先輩方に甘えてみる事にしました。
簡単にではありますが、駐車スペース、エントリー場所などをお聞きします。
あとは自分で歩いて探すのみです。
まだ知らぬ場所に期待が高まります。








瀕死の南紀特急での旅になるが、南紀まであと、一時間弱というのが小さくも大きいのである。
大喰らいの我車にいたっては、実に給油が一回減るという事。
夜間の移動において、通行はとてもスムースであり、出発時間にも大幅な余裕が生まれるのだ。
結果として、まったりと休憩を挟みながらも約2時間で到着となった。
今宵は月明かりがこうこうと照らしてくれる。
それでも、山中に入れば真っ暗闇に包まれてしまうのだが・・・。
怖さよりも、好奇心が少しばかり上回っているのだろう。
早々に準備を済ませて磯へと歩む。










山道を行く中で少しそれを後悔した。
時折、暗闇のまだ先から獣の気配がする。
ヘッドランプに照らされた落ち葉の上には、ぬらりと糸を引く大ナメクジが光っていた。
蜘蛛の糸かとその垂れ下がる先を見ると、いかがわしい色の毛虫がぶら下がっているといった具合である。
まだ耐えられるレベルの事ではあったが、もし、これで山蛭を見たら正気を失っていただろう。
アレほど恐ろしい悪魔はいない!
幽霊などアレに比べれば可愛いものである。








道の様なものを辿って行くと、だんだんと波の音が大きくなって来た。
いよいよ海が近づいている様だ。
少し行くと急にその傾斜がきつくなって行く。
闇の中、滑る様に下って行くとようやく磯に辿り着いた。
気味悪いのを除けば、とても近く快適な道だと思えた。
しかし、どうにも腑に落ちない。
初めての場所とはいえ、予想よりもあまりに早く着いたからであった。
荷物を降ろし、ここで携帯電話を取り出す。
一番遠くまで照らせる様にヘッドランプを絞り、辺りの景色を頭にインプットさせて行った。
それらをグーグルマップの航空写真に照らし合わせて行く。





Oh My Gosh!!






どうやら、一つ手前の磯に降りてしまった様である。
あの、急斜面をまた戻るの???
自問自答してみたが答えは一つである。
目指す場所に立ちたい。
結局、息も絶え絶えに元来た道を戻るのだった。
坂を登り切った頃、両太ももがビクビクと笑っていた。
軟弱な身体である。







今度こそ、それらしい道を進んで行った。
しかしどうした事か、少し行くと草木が生い茂っているのである。
かなり不安になるパターンだった。
必死に進み、まったく身動き出来なくなった事、また、断崖絶壁に出たといった事は多い。
勘弁してよ!っと独り言が出てしまう。
蜘蛛の巣を顔じゅうに受け、草木をかき分けて進むと急に視界が開けたのだった。
どうやら合っていた様子である。
荷物を置き、タックルの用意を終えた頃に空は白み出した。
休む暇も無く水際に立った。
明るくなるまで、はたしてここがどんなかは分からない。
とりあえずといった感じで、まず結んだのは直ペンであった。








今日の海はとても静かである。
そよ風が吹き、波気も殆ど無い。
時折、小さなウネリがやって来るが、少しばかり磯を洗うほどの優しい感じなのだった。
15センチ程のそのルアーはよく飛んだ。
前回の釣りで、PE4号をかなり失ってしまっていたのだが、結局、新たに巻き替える事は出来なかった。
試してみたい事もあり、別のスプールに巻いていた、PE5号で釣りをする事にしたのだった。

しかしどうした事だろう。
ルアーは全く潮と絡まないのである。
綺麗に入水してくれないばかりか、水面でのアクションさえままならない。
釣行が減り、自身の入力が衰えたかと不安になった。
それ程にまるで噛みあわないのだった。
しばし粘ってはみたが、これでは釣れるものも釣れはしないだろう。
諦めてルアーチェンジしてみる事にした。
次に結んだのは、3センチほどサイズアップした物であった。
重量にして約30グラム程重くなっている。
アクションを入れたその瞬間から、全く違う感覚が竿を通じ伝わって来た。
どんなに意地悪な動きを入れてみても、その絡みを失う事は無かったのである。
潮流、波の向きや風向き・・・。
理由はよく分からない。
ともかく、全く引き心地が良くなったのだった。
今日はコイツで通すと決めた。










どの位の時間が流れただろうか。
出そうで出ない海は、ただただ沈黙を続けていた。
もう一投、もう一投とキャストを繰り返す。
その期待感は良くない殺気となっているのだろうか。
いくら投げてみても何も起きなかった。

そもそも、そんなに楽に釣れるとは思ってもいない。
今日は普段、縁のある魚は考えない様にしたつもりであった。
果たして、その海に今いるのかどうか、それさえ分からない奴だけを意識したのであった。
しかしながら、自身の気持ちはもう持ちそうにはない。
どうにも集中出来ないのだった。
良い時間に、好きなジグの釣りをしてみたいのもあったのだろう。
切り換えるその時、少しだけ竿を置いてシャッターを切ってみた。


























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海はいつ見ても美しい。
しばし海を眺めて煙草に火をつけた。
だがしかし、いつもの安らぎを感じないのだった。









そしてジグを投げる。
着底を待つが、あまりにも早く底についてしまうのだった。
自身の予想よりもずっと浅い様である。
浅いなら浅いなりのジギングを。
そう思ってアクションを入れてみたのだが・・・・。
何度繰り返してみても結果は同じであった。

感覚としては、竿の動きとは裏腹に、全くうまくジグが泳いでいない感じがするのだ。
それがはたして水深によるものか、はたまた風や潮によるものかは分からない。
また、いつものラインとは違うのである。
ジグの形状、重さ、ウエイトバランスも換えてはみた。
しかしやはり、どうしても気持ち良く釣る事が出来ないのだった。

魚だけではなく、今日は烏賊も気になってはいる。
一緒に持って来たエギングタックルを用意し終わる頃、やっと魚の気配を感じるのであった。
少し場を休めたからであろうか?
沖から、数多くのトウゴロウが磯に向かって跳んで来る。
何の水飛沫も上がらず、魚の姿はそこからは見えない。
だが、確実に何かに追われているのだ。
気にせずに餌木を投げる。
何度も繰り返したのだが、どうしても烏賊の姿を見る事が出来なかった。
しばらくして、再びプラグを投げてみたが何も起きなかった。



























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とはいえ、釣りを続けているならば何が起きるか分からない。
しかし、今の自身にはその気持ちの余裕が無いのであろう。
どうしても釣る!
そう思えないのだ。
生活での不安定さが、自身の場合、釣りに直結してしまう様である。
この時点で、勝敗はついていると思った。
静かに竿をしまった。










車に戻り走り出したのだが、時間だけはまだまだ余裕があった。
懐かしい漁港での烏賊釣りでもと、何か所か立ち寄ってみたのだが・・・。
行く先々で青物のナブラが沸き続けてたのである。
水面を割るその姿から、ツバス~ハマチのサイズに思えた。
見え烏賊は皆無であり、ストラクチャーやボトムを執拗に狙っても、口を使わせるまでには至らなかった。
目の前のナブラが気にならない訳ではない。
磯から釣る魚だけが、自分にとって意味があるとも思っていない。
でも、どうしてかキャストする気にはなれなかった。
ただただ、烏賊が釣れないのが残念であった。




今回、立つ事が出来た磯はとても素晴らしい場所であった。
海況次第では、おそらく、未曽有の可能性があると思う。
また、それは他の磯も同様であろう。
ただ、その時の気持ちでは釣りきる事が出来なかった。
それだけである。
釣り下手な自分、弱い心の自分がそこに立ったというだけなのだ。
生活の基盤の再建が急務である。



それでは