1月19日の日記







年間を通して、好きな海に通っていると色々と気付く事がある。
そしてまた、その釣りごとに、旬となる魚との出会いがあるものだ。
ここで言う旬とは味覚のそれではない。
例えば、毎年、だいたい決まった時期にそこに魚が集まり、ある釣法にて目立った釣果が得られる。
釣り用語を借りるならば、それは、シーズナルパターンとでも言えるだろうか?

とはいえ、好機が来たからと、イージーに釣果となる訳ではないだろう。
様々な要因がうまく噛み合えば、比較的、容易にそれは結果となる。
もし、それらの要因が揃わない時、はたしてどうするか?
自身が積み重ねて来た経験をもとに、その引き出しをフルで開けてそれに合わせて行く。
簡単ではないからこそ、その一匹の価値はそのアングラーにとって大きなものとなる。
携帯電話やパソコンを起動させ、僅かにクリックすれば無数の釣果を見る事が出来る昨今、その様な感覚は気薄となっているかも知れない。

話しが逸れてしまったが、はたして、その要因とは何であろうか?
極論すれば、それは宇宙の法則であり、大自然のリズムではなかろうか。
しかし、我々人間にはなかなかそれが分からない。
ゆえに、自然の中の様々な現象を手掛かりとして、少しでも近づこうと、日夜研究を重ねていらっしゃる方も多い事だろう。





今回は、先日の日記の後篇となります。
最近、ライトゲームに夢中ですが、その傍ら、自然からのサインを一つ一つ確認する毎日でもありました。
そしてまた、ライトゲームから何かを見出そうともしていました。
そうして、その時を静かに待っていたのです。
自身の中では、機は熟したと思いました。
しかしながら、それは海の事であり、当然、行ってみなければ分からないのです。
あまり気負わずにゆっくりと磯を楽しもう。
その位の気持ちで挑む事にいたしました。









南紀特急の中で目覚めたのは、午前6時20分であった。
5時半に携帯電話のアラームをセットしたのだが、やはりそれで起きる事は出来なかった。
真っ白に曇った窓ガラスを指で拭いて行く。
煙草に手を伸ばし、まだよく開かない目で外を眺めるのだった。
小粒の雨が静かに降っている。
そのせいか、まだまだ辺りは薄暗いのだった。
とはいえ、もうこれ以上、朝の好機を無駄には出来ないのだ。
エンジンをかけすぐにハンドルを切った。


駐車スペースには一台の車も無かった。
余程の物好きでない限り、真冬の雨の磯を喜ぶ者はいないのだろう。
知らず知らずの間に、私もまたそんな物好きの一人となった様だ。
ニヤケながら携帯電話で呟いた。
雨の為、普段、愛用している防寒着をはおる事は出来なかった。
とても暖かいものだが、残念ながら防水ではないのである。
真冬の上物師よろしく、綿入りのゴアテックスが欲しいのだが買う余裕は無い。
寒いのだが、フリースを一枚重ね着して合羽をまとうのだった。
少しストレッチをすると、中からポカポカとして来る。
自身には珍しく体調も良い。
雨模様とは裏腹に、とても清々しい一日の始まりであった。
気分も高らかに、足早に磯への道を歩いて行くのであった。



しばらくして磯に降りた頃、ようやく自身の勘が目を覚ましてくる。
もちろん、朝の磯はとても寒い。
しかしこの日、ただ寒いというだけの感覚では無かった。
僅かにだが、降り注ぐ雨を暖かく感じるのであった。
頬に当たる、そよぐ程の風もどこか優しいのである。
波の音は静かであり、広がる海はとても凪いでいた。
この日は若潮であり、これからの時間帯には干満の差も僅かである。
歩きながら釣れるかもと思った。
これを書いている現在も、何故か鮮明に蘇る記憶である。
やがて、目標とする先端が見えて来るのだった。
はたして、今日の釣りをどうしようかと、とても興奮する一時である。








タックルを持ち、磯際へと立った。
すっかり陽は昇ってはいるが、それでも雨の為に光量は控えめである。
見渡す限りの海は全くの凪であった。
凪とはいえ、池の様な海だという事ではない。
波こそ無いものの、ちゃんと潮流は走っているのだ。
微かだが、左手より潮は上っている様に見えた。
それらを感じながら今日のドラグを決めて行く。
感覚では、約7キロほどとしてみた。
これならば、非力な自身でもいきなりノサれる事は無いだろう。


まず、最初のルアーとして結んだのはペンシルであった。
自身の経験から、それが最善であると直観したのである。
好きなポッパーでは光量がありすぎるし、ミノーでは波が足りないと思った。
それについては、「あくまでそういう事が多い」、という位のものでしかないとお断りさせて頂きたい。
もちろん、真昼間でもポッパーで釣れるし、凪でもミノーに喰いつく。
その勘が間違っていたら、また違うものへとシフトして行けば良いのだから。
海を見て、投げてみて、その日の魚の気持ちを探してみるのも楽しいものである。


とりあえず、気になる流れへとルアーを届けて行った。
ゆっくりと、そのルアーの動きを確かめる様にアクションして行く。
また、ゆっくりと我が身をほぐして行くのだった。
おそらく、もし、魚が居るとすれば既に射程圏内に入って来ているはずだろう。
いつもながら、見えるベイトの姿は全くもって無い。
既に、磯際まで到達しているのかもしれないが、今のルアーにて探るのは難しいと思った。
ならば、その根の更に向こう側、その深みにいる奴を引き寄せるのみだと。

全く、自己中心的な発想に間違いないのだが、実はそれには訳があるのだ。
お恥ずかしい話、自身の腕ではフルキャストした先のルアーに細かい動きを与える事が出来ない。
だからこそ、そこに至るまでの間は、ルアー本来が持つ泳ぎの能力に頼るしかないと考えている。
ルアーが生まれながらに備える、その魅力で惑わし、奴を誘い寄せるのだ。
最後にキメのアクションを叩き込み、そこで狂わせてやる!
そんなシナリオを浮かべる。
ウォーミングアップを5投ほどで終え、気持ちも新たに本腰を入れて行くのだった。







続いて、竿先を向けたのは違う流れであった。
やはり、沖には根が沈んでおり、その更に向こう側へとルアーを送る。
自身の立ち位置からは右斜め前方の地点となる。
当然、立ち位置から、真正面にキャストすれば最も飛距離は稼げるだろう。
あえて、斜めに引きたいのは、その時の流れ、風、波の向きが理由であった。
それらにうまくルアーが絡むならば、未熟な自身の操作であっても、時としてすこぶるベイトライクに泳ぐ時があるからである。
そしてまた、そのトレースライン上では、過去に何度かのチェイス、ヒットを得ていたからでもあった。
この日、幸運にもそれらが合致しているのだった。
1投、また1投と、少しずつルアーの着水地点を変えて引いて行った。
アップテンポに泳がせて行く。
そこに魚が居て、ルアーを意識していると信じる事にした。
再度、全力でロッドを振って行く。
空気の壁を切り裂き、ルアーは沖へと飛んで行った。
着水と同時に、その重みにより大きな水飛沫が上がる。
くしくも、自身の黄金のラインに乗ったのだった。
そこで根魚のライトゲームを思い出す。
欲しかったのは、その極スローさであり、待ちの呼吸感であった。
ゆっくりと動かし、ふとその呼吸で止めてみる。























すると、今にも爆発するかの様な勢いにて、ルアーの後ろの水面が膨れ上がるのだった!
やはりついていたか!!
考えるより先に手が動いていた。
全くの手癖でアクションを入れていたと思う。
刹那、音も無くペンシルが消えた。
飛沫さえも見えはしなかった。
アワセもまた、奴の鼓動を感じてからとか、そんな風では無かったと記憶している。
何か身体が自然にそうしているのだった。
























ズドン!









かなぐり上げたレイジングブルはすぐに動かなくなった。
より小さく、リールの少し上を意識してもう一回だけそれを入れた。
気持ち、ロッドを引き寄せながら奴の鼓動を確かめて行く。
ツバスのそれではない、重量感のある感覚が伝わるのだった。
思えば何か月ぶりだろう?
やっと、良型のブルーランナーとつながったのである。

喜ぶのはまだ早い。
奴の下は根だらけなのである。
すぐさま、リールを巻き殴って行った。
おそらく、奴は咄嗟の事に戸惑っていたのかもしれない。
もしくは、こちらに向かって泳いでいたか!?
どちらにせよ、思いのほか軽く寄って来たのであった。
しかし、約10メーターほど寄せたところで、突然、奴は目を覚ましたのであった。
グンっと穂先を曲げたかと思うと、そのまま強烈な力で潜り始めたのである。

これには面喰らった。
たまらずに悲鳴をあげるソルティガ!
勢いの乗ったその走りにドラグが止まらない。
ロッドを抱かえる様に持ち、スプールを止めながらも、ドラグノブを何回転かさせて行った。
やっと、リールの逆転は止まったが、今度は奴のパワーがフルにロッドを襲う!
たちまち、レイジングブルが美しい弧を描いて行った。







何メーターほどラインをやってしまっただろう?
出されず、また、寄せれずの硬直した状態で考えていた。
幸いにも、あの嫌な根ズレの感触は伝わっては来ない。
これでもか!と曲がるロッドを見ていると、ふいにその力が弱まった気がした。
よく分からないが、竿の曲がりが元に戻ろうとする力によって、少し魚が浮いて来た感覚であった。
更にドラグノブを回し、そこからは、いつも通りの力まかせによるファイトに移った。
結果的には、これは大きな間違いであった。












すぐに、膝を使ってのショートポンピング、そしてゴリ巻きで寄せて行った。
強烈な引きに、実はスレ掛かりではないかと疑っていたのである。
沖に逃げようとする素振りを見せる奴だったが、グッと竿を使うと意外にも素直にこちらを向くのだ。
おそらく、逃げれそうな根を見て、火事場の馬鹿力を出したのでは!?と思う事にした。
ともかく、その姿をすぐに見たい!
長らく見ていない奴に焦ったのである。


磯際、約2メーターほどまで寄せた頃、いつもの抵抗が始まる。
これをかわせば、勝利は目前である。
おそらく、その油断も一つの原因であったろう。
ロッドを立て、強引に巻き寄せていると奴の動きが変わった。
再び底に向かって走り出したのであった。

リールが巻けなくなり、ただ耐えるしかなかった。
それでも尚、強さを増す奴の引きにとうとう力負けしてしまう。
体勢を保てなくなり、腕を持って行かれてしまった。
魚との距離は僅かであり、それがダイレクトすぎるのだ。







その瞬間、磯際に向けて突っ込み、それに沿って真横に走ろうとする。

危ない!!

あわや、PEが磯を擦るところであった!
咄嗟に前に出て、ベールを返そうとする。
しかし、強いテンションが掛かっており、PEがローラーに喰い込まんばかりに締め付けられているのだ。
返そうにもベールが起きないのである。
調子に乗った奴はその強さを増すばかり。
とうとう、穂先が海面に刺さりそうになった。
ここで、バキッ!っと嫌な音を立て、衝撃と共にベールが起きてくれたのだった。
最悪の事態は何とか免れた。







事あるごとに、私はよくベールを返して難をしのいで来た。
この行為には、おそらく、賛否両論があると思う。
フリーにしている間、まさに、魚まかせ、運まかせとなってしまう。
出したつもりが、逆にラインを根に巻かれたり、根の深い部分に魚が入ってしまったりもあるだろう。
おそらく、そのファイトを、全て自身の支配下に置く様なアングラーの皆様はしないかもしれない。
勿論、自身もそれは心配である。
しかし、そうしなければ間違いなく切られていただろう。
ならば、そこで、ジ・エンドなのだ。
少なくとも、五分五分の可能性が残されるこの行為を、きっとまた、その時が来たら躊躇無く行うだろう。
本来的には、そうならない様なファイトへと運ぶべきであろうが。








ベールを返している僅かな間に、大急ぎでドラグノブを緩めて行くのだった。
ドラグが出ないという事は、テンションを残しながら魚を出してやる事が出来ないという事。
その時の自身はそう思った(それが正しいかは、現時点の私には分かりません)。
フリーにする事にて、仮に根をクリア出来たとしても、フックオフの可能性もまた高まる事だろう。
それと同時に、ある思いに足が震え始める。
きっと、これはバラしてはいけない魚なんだ!!
喜びよりもむしろ、ある種の恐怖にも似た感情が芽生えるのだった。
ミスはもう許されない。






ベールを元に戻しきいてみる。
幸いにも、再び奴の鼓動を感じる事が出来た。
幸運にも、殆どそこから動いてもいない様である。
磯際より、約3メーターの位置にあり、根に触れる感触も無くオールクリアーとなった。
そこから先は慎重なファイトを心がけた。
寄せてはまた出し、そんな事を何度か繰り返して行った。
少しづつ、確実に奴の力が衰えて行く。
しっかり眠ったおかげか、自身の力にはまだ余裕があった。
そして、軽くなった奴が浮き始める。
姿を現したそいつは、ゆっくりと右に左にと向きを変えた。






















でかい。





ただただ、頭に浮かんだのはその言葉だけだった。
よく見ると、リヤフックの2本だけが、かろうじて奴の口元を捉えているのみである。
一度、水面に頭を出し、激しいヘッドシェイクをした時はめまいがした。
何故、すぐにランディングに入らなかったのか!?
自宅にギャフを置いて来てしまったからである。
滅多に使わないのでよく忘れるのだ。








もちろん、今、磯にいるのは私一人。
眺めていても魚は上がって来てはくれないし、もし、今度暴れたら外れてしまうかもしれない。
そこで覚悟を決める事にした。
歩きながらリールを回し、可能な限り、緩くそのテンションを保つ様にする。
そして、磯際まで降りて行った。
中腰まで屈んでみたが、あと少し、どうしても魚に手が届かなかった。
私を見て暴れ出す魚。
万事休すである。



その時、またもや幸運が味方するのだった。
寄せる波ではなく、不思議にも海面がゆっくりと上昇して来たのである。
焦る様な勢いではなく、とてもスローに膨れ上がった様な感じであった。
それに乗り、奴もまた、私のもとへと近寄って来たのである。
今しかない!
次の瞬間、尾っぽの付け根を鷲掴みにしていた。
ゴンッっと振り払われそうになったが、絶対に離すものかと!
その時、目の前で静かにフックが外れた。
間一髪である。
水から出そうとして、その重みが腕にのしかかる。
もう、無我夢中で引き抜いていた。
ついに、我が手中に横たわったのである!!




































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ブリ 97センチ 7.8キロ!!

感無量です
手が震えて写真がブレました。





























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暴れさせては可哀想と思いタイドプールへ。
食べる派の私はもちろんキープしますが、しばしその姿を見ていたかったのです。
互いによく粘りました。
何か胸が熱くなって行くのでした。
おそらく、その長さのわりにはかなり痩せていると思います。
後にシメましたが、まだ小さいですが卵を抱いていました。
産卵前の荒喰いなのでしょうか。
数少ないメジロの釣果を得た時、その殆どがメスである事が多いのです。
シイラもまたそうであり、より大きく、重量のある、オスへのアプローチは他にあるのかと疑問が生まれました。
ともかく、やったね!です。
嬉しい







その後、気分を変えてエギングをしてみたり。
更なるヒットを得られないかと数時間粘ってみた。
何といっても、到着早々、10投にも満たないキャストでの事だったからである。
結果として、その後、二度とは魚信を得る事が無かった。
シメた魚の胃は空っぽであり、ヒントとなる様なベイトの残骸を見る事は出来なかった。
いったい、そこに何匹の魚が居たのか知る術は無い。
その中で、自身のルアーに反応する魚と出会えた事は、幸運以外の何ものでもないだろう。
また、そのファイトやランディングの中でも、幾度もその幸運に助けられた気がするのである。
今回もまた、南紀の海の仏様が微笑んだ気がしてならないのだ。
海と魚に一礼しその場を後にした。


それでは





My Tackles


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