5月9日の日記







いったい、どれほど眠った頃だったろうか。
頬のいやおうのない違和感に目を覚ます。
指でなどると、熱く、痛痒い感覚が遅れて伝わって来る。
寝ぼけた頭では、その全てがスローモーションであった。






なーんて言ってみますが、何の事はない、蚊によるただの虫刺されなんですね~
しかし、コイツが非常に厄介な奴なんです。
車内に二匹も入りますと、もう寝ている間にボコボコにされてしまうのですね。
あのプーンという音がとても大きく感じます。
蚊取りも、殺虫剤も無い中では一撃で仕留めるしかありません。
かといって、暗闇では、その感覚からはどこを刺しているかは分からないのです。
なので、その羽音だけを追い、一番それが大きくなる様に仕向けるのです。
要するに自ら誘導して、自身の耳を蚊に捧げるのです。
幸運にも耳にその針を刺したその時、確実に殺るのです!
今宵はこれで三匹までを静かにさせました。


グッタリと疲れて再び眠りに落ちます。
おそらく、三段重ねでセットしてあった携帯アラームを全て解除したのでしょう。
目覚めたのは、起床時刻を大幅に過ぎた午前4時半でした。
渡船の出船時刻は4時50分です!
慣れないRock父を連れては間に合いません。
すぐに電話をして、二番船での渡礁をお願いするのでした。
もう、結果オーライです(笑)







Rock父にとって、渡船での磯あがりは初の経験となる。
自身にとっても、実に5か月ぶりの渡礁となるのであった。

渡船屋に着いておかみさんにご挨拶をする。
準備が出来次第に行くよっ!と有難いお言葉。
急いで荷物をまとめ船頭が待つ港へと向かった。
すぐに港に着くと船頭が待機していて下さった。
今日は初めてのRock父が居るのだし、おまけに第二便での渡礁である。
父に無理をさせないのは勿論の事、周りの釣り師の妨げになる事だけは避けたい。
よって、自身の釣りは考えない様にして来たつもりであった。
ともかく、安全に誰にも迷惑をかけずに楽しむ事。
それがまた、慣れない父にゆっくりと楽しんでもらうのにも一番だと考えたのである。


これを船頭に素直にお伝えする事にした。
幾つかの磯の候補をあげ、更にそこに釣り師が渡っていないかを確認させて頂く。
一つ一つ、その質問に丁寧にお答え下さった船頭ではあった。
しかしまた、こうも付け加えて言われたのである。


「今そこは喰いが悪い。」
「足場が悪く危ないぞ。」



この海を知りつくしてみえる船頭が言うのだから間違いはないのだろう。
分かりました、お任せいたします。
そう言って、船頭の助言を待つのだった。
即答される船頭。
その言葉には耳を疑ったが、なるほど、喰いも安定していて足場も比較的に良い。
しかし、他の方々もいらっしゃるし本当に良いものか!?
嬉しい半分、心配になってすぐに答えられないでいると、船頭は更におっしゃった。



「ええ、大丈夫や。」
「こっち側で竿出したらええ。」




有難うございます。
お願いいたしますと一礼しすぐに荷物を積んで行く。
これから向かう先は名礁、第一級の磯であった。
その様な磯にRock父を連れていってやれる!
予想だにしなかった幸運に心から熱くなるRockbeachであった。










船は静かに港を出て行く。
大海原に出てもそれは殆ど変らない。
とても穏やかな海が二人を出迎えてくれた。
これならばきっと、危険な渡礁のその時もスムースに行くだろう。
そんな事を思いながら海を眺めて行った。
やがて前方に目指す磯が見えてくる。
数人の方がいらっしゃった。
潮位も高くはなく、打ち付ける波も殆ど無い。
やがて船首が磯に押し付けられ、まずはRock父は手ぶらで磯に渡る。
数個の荷物を手渡し、自身は持てる限りの荷物を持って一気によじ登るのだった。
こうして不安無く渡れるのも、船頭の類まれなる操船技術あってのものである。









すでに竿を出されている方々にご挨拶をすると共に、申し訳ありませんと言って傍を通らせて頂いた。
その内、何人かの方々は見覚えのあるお顔であった。
早速、荷物を降ろして一息つく。

Rock父に本格的な磯での仕掛けは分からなかったが、号数の違う磯竿を数本、そして色々と狙える道具を持たせてあげていた。
まずは何をしたいか尋ねると、浮き釣りをしてみたいのだという。
私は勿論の事、父もいわゆる 「フカセ」 などした事はない。
幸いにも足元の海はそう深くはなさそうに見えた。

シンプルに浮き止めゴムを通し、そこに玉ウキを刺す。
あとは小さなガン玉を一つ付けるだけの仕掛けとしてみた。
流れに乗せたり、様子を見ながらタナを変えて行ったりしてみたら?
そんな感じでとりあえず始めてもらう。
しかし困った事に、サシ餌のオキアミがどうにも柔らかい様だった。
仕掛けをゆっくりと放つだけで針から外れてしまうのである。
潮に馴染んでもすぐに餌が無くなっていた。
浮きには何の変化も出ていないので、やはり餌が自然と外れてしまうのだろう。
それは私にはどうしてやる事も出来ない。
釣り行く中で、Rock父に上手くやってもらう以外にはないのだ。
ある程度、慣れる父を見届け、やっと自身の竿袋の紐を解いて行った。









自身の釣りは二の次であったとはいえ、そこは道具だけはちゃんと持っては来ていたのである(笑)
釣師の数も多く、今日は広範囲に探る事は難しい。
そこで、いつもより幾分かライトな道具に手を伸ばした。




Rod RAGING BULL 100XR-1
Reel 10 SALTIGA 5000






ロッドはいつもよく使うものだが、リールの方は少し番手を下げてみる。
撃てる場所の水深は浅く、ジグを用いたとしてもそれほどの抵抗とはならないであろう。
また、ショートキャストを数多くこなしても行きたい。
僅か数百グラム軽いだけではあるが、されどの軽さなのである。
自身の体力ではその疲労が全く違ってくる。
これからの長期戦を考慮しての選択であった。




まずはトップから始めて行った。
あくまでも様子見である為、今回は特にそれで粘る事はない。
広範囲に何度か通してみてすぐにルアーを換えて行った。
しばらくすると、沖合約200メーターほどの海面を何かが割っているのが見えた。
遠いのを除いてなお、そのボイルはとても小さく見えた。
数も僅かな様である。
キャストしながら眺めていたが、約10秒ほどでそれは消えてしまった。
更に続けていると、一つまた一つと遠くに船の姿が見えて来る。
ケンケン漁をする漁船、そしてジギングをするボートも出ている様だ。
何か魚の姿が映っているのだろうか?
しかし、どの船も釣れている気配はない。
プラッキングによる一通りの攻めが終わった頃、南の空が黒い雲に覆われ始めた。
遠くでは地鳴りがごとく雷鳴が響いている。
一雨くるな・・・。
空は更に暗くなって行く。
南から強い風も吹いて来た。
やがて大粒の雨が頬を打った。
そしてすぐに雨風が叩きつける。






Rock父の方を見ると、風にあおられて長竿を持っているのがとても辛そうに見えた。
何より、どんどんと雷が近づいている様に思えたのである。
ともかく、まずはしゃがんでもらう様に伝える。
ふらつき、転落でもしたら大事になる。
落雷を避ける為、竿を立てずに置いて離れた方が良いとも伝えた。
自身はすぐにロッドを置いた。
しかし、周りの釣師は誰も竿を置く気配は無い。
稲光が走りどんどんと雷鳴が近づいて来ているのに。
皆んな怖くないのだろうか?
ともかく、我々は極力静かにその小嵐が過ぎ去るのを待った。
強い風と共に波も一気にその勢いを増して行く。
どちらにせよ、下手な我々がまともに釣りが出来る状態ではない。
危険と判断した船頭が、いつ迎えに来てもおかしくないなと自身は思っていた。
しかし、だんだんと雨脚は遠ざかって行った。
それに伴い風向きも変わる。
嘘の様に雨は止んだが、強い風が逆の方向から強く吹き続けたのだった。








雷がどこかに行った頃、再び釣りに戻るのだった。
相変わらず吹きつける風に向かっては、ルアーの飛距離は大幅に失われてしまう。
波気も立ち、潮もまた違う流れ方をして見えるのだった。
ここで数本のジグを取り出して行く。
じっくり、ゆっくりとジグで探って行きたいと思った。
一時間か二時間か、集中してやっていた為にその感覚は無い。
やがて風も緩み、朝の穏やかな海に戻りつつあった。
もう今の立ち位置から届く範囲は探り尽くした、少し離れたあの場所で投げてみたい。
そう思って歩き出すのだった。
雨で濡れてしまった磯は平坦な部分でさえよく滑る様になっている。
おまけに、いつものフェルトピンスパイクはRock父に譲っていた。
今、自身が履いているのはただのピンスパイクであった。
何度かズルっとしながらも進む。
やがて、下りの急勾配となった。





あそこに足をかけたら滑るだろうか?
おそらく滑るだろうが、すぐにあの平坦な部分まで行けるだろう。








そんな風に思っていた。
そして、その一歩を踏み出した時だった。
予想は正しく、そして間違っていたのである。
踏みしめた岩はまるで氷の様であった。
瞬間的に投げ出されて宙を舞ったのだ。
何とか、前向きに倒れる様にするのが精一杯であった。
右肘から着地し、全体重が圧し掛かって行く。
耐えきれずに曲がり、持っていたロッド、リールを岩に打ち付けてやっと身体が止まった。
突き出た岩に背中、横腹を強打してもいる。
一瞬、呼吸が止まる程の衝撃であった。
すぐに重い痛みが広がって行く。


涙目をこすりタックルを見た。
どうやら、今回はロッドも強打してしまった様だ。
リールを見ると、エンド部分は変形し、スプールとローターにも損傷が見られた。
やってしまった。
おそらく駄目だろう。
そう思って振りかぶりそのまま投げた。





パン!





何度も聞いたあの嫌な音が響き渡る。
皆が振り返るほど大きな音が鳴った。
折れたロッドがまるでヤエンの様に海の中に突き刺って行った。


























P1010864

痛みか、それともショックのせいでしょうか。
涙目はさらに景色を霞ませるのでした。
またやってしまったのです。
想い出が詰まった竿を、自身の不注意で折ってしまいました。











折れたロッドを回収し、元来た道を戻るのだった。
そして、それを静かにしまう。
もうワンセット、使えるタックルは持ってはいる。
しかし、それを紐解く気にはなれなかった。
しばらくの間しゃがみ込み、話す事も出来ないのだった。
強打した右肘にも嫌な痛みが走る。
今はキャストさえ出来そうにない。
静かに時間だけが過ぎて行った。









しばらくして、再び握ったのは磯竿であった。
落ち込んでいても仕方がない。
何より、Rock父もそれでは楽しめないだろう。

そこで、カワハギを狙っての仕掛けを落とし込んでみる。
着底し、すぐに底を切ると小気味良いアタリが伝わって来た。
上がってきたのはシラコダイであった。
チョウチョウウオによく似た黄色い魚である。
何度やっても、このシラコダイばかりが釣れて来た。
おそらく、そのあまりの勢いに他の魚には届かないのだろう。
磯ベラさえもが喰わなかった。
一匹を巻き上げて来ると、下からワーっと群れが追いかけて来るほどであった。
数匹を釣ったところで諦める。
やはり、自分にはルアーしかない。
そう思いもう一つのタックルに手を伸ばした。







タックルを準備し終わった頃、海の様子が変わり始めた事に気付く。
沖合を流れる潮に変化があったのだ。
しばらくすると、離れた場所にみえる方が自身を呼んだ。
海を指さし、潮が変わった、絡む様な潮が当ててきたぞとおっしゃってみえる。
こっちに来て投げてみろと言って下さった。
お言葉に甘えて移動する。
しかし、残念ながらそこでは何も起きなかった。
けれど、餌師の方のご厚意は凄く嬉しかった。
元の場所に戻り無心でキャストを続けて行った。





いつ魚が回ってくるか?
また、いつそんな魚のスイッチが入るか?








自身にはそれを知る術は無い。
ただただ、その時が来ると信じてキャストを繰り返すのみなのだ。
やがて、遠くに見えていた潮がとうとう磯を直撃する様になる。
今まで、何事も無く入っていた底物師の仕掛けが斜めを向いて流され出した。
おそらく、今日の最後の大変化だろう。
それが好機なのかは分からない。
しかし、自身は変化をチャンスと思い込む様にしている。
やるだけの事はやる!
すぐにジグケースの中からお気に入りのロングジグを取り出した。
ともかく、今はこれを撃ちまくるのみ。


シャクル度に右肘には強い痛みが走った。
構うものか!
無視をして続けて行く。
っと、キャストして届く場所にボイルが出た!
小さいボイルだが、水面にて激しく追い回す何かが見えた。
浮きグレやボラのジャンプではない。
全力でジグを回収して、そのボイルに向かって撃ち込む。
二度通したが追って来る気配は無い。
おそらく、御三家ではない。
そう直観してルアーケースまで走った。







急いでルアーを交換する。
結んだのはプラグであった。
再び立ち位置に戻るもボイルは消えている。
丁度、その頃、何人かの方が荷物をまとめて移動され始めた。
そこで空いた場所に立たせて頂く。
改めてキャストをし始めると、少し離れた場所で再び飛沫が上がった。

もっと寄れ!
そう念じると本当に群れが近づいて来た。
狙いを定めて全力でロッドを振る。
残念ながらこのキャストでは少しボイルを外してしまった。
全速力で回収する。


次は外さない!
全力にて投げたルアーがボイルを直撃する。
すぐに強くヒラを打たせた。
バシュっと水面が割れ、何かが身を露わにして飛びかかる!










ガツン!!








自身のルアーに魚雷が被弾する。
間髪入れずに強いアワセを二回叩き込む。
しかし、魚は走る事が出来ない。



今日は幾度となく、サメの不気味な背びれを見ていたのだった。
そして、今、磯の周りを流れる潮はとても速い。
魚を潮に乗せてはならない。
それは過去に自身が痛烈に味わった事であった。
サメをかわし、潮にも乗せない。
私には 「真っ向勝負」 しか思いつかなかったのである。






竿を立ててその走りを止めた。
途端にガクガクとロッドが震え出す。
それはやがて大きくも小刻みな振動となって行った。
超高速のバイブレーション。
そう、サバなどが生み出すあの感覚である。

しかし、ここまで大きなものは初めてだった。
少しその勢いが衰え、今だ!という気がした。
そのままの態勢にて二度、更に強く追いアワセを入れる。
絶対に逃がすものか!
そこでロッドを下げ、魚に対して真っ直ぐにして行った。
後はただリールのハンドルを巻き上げるのみ。
一気に回すと、Z6500EXPの強大な力に一瞬にして魚が浮いた。
真っ直ぐ水面を走ってくるその姿。
近付くほどに胸が高鳴る。
そのまま、一気に瀬際まで寄せて抜き上げた。
予想以上に重かったが愛竿はヤワじゃない。

























P1010854

ついに!ついに陸から出会う事が出来ました!!
遠い沖を泳ぐこの魚。
いつか釣りたい。
ずっと夢に描いていたのです。

本鰹

やったね!!

























P1010860

いつもの様に記念撮影です。
先日、購入した 「Z6000GT Spool」 にも入魂する事が出来ました。
ロッドを折ってしまった事は本当にショックでしたが、諦めずに頑張って本当に良かったです。
メチャ嬉しかったなぁ























P1010866

Rock父も最後まで粘りの釣りをやり切りました。
グレは釣る事が出来ませんでしたが、ナイスサイズのアイゴを上げていました。
父ちゃん、やったね!








今までずっと両親には面倒ばかりかけて来ました。
おそらく今も。
今回の釣行でも、正直、楽しんでもらえたかは分かりません。
これからも機会を見つけて、父だけではなく母とも過ごす時間を増やせたらと思いました。
末永く元気でいて欲しいです。


それでは





My Tackles

Rod  MC Works RAGING BULL 100XR-2
Reel  DAIWA SALTIGA Z6500EXP with Z6000GT Spool
Line   YGKよつあみ PE #5
Leader VARIVAS NYLONE 100LB

Rod   MC Works RAGING BULL 100XR-1  殉職