5月30、31日の日記







前回の日記で、しばらく釣りには行けませんと書きました。
すみません、嘘になっちゃいました
あの、スコールの様な雨の中で一瞬だけベイトが見えたのです。
それから、家で潮や水温などをチェックする毎日でした。
そして、それらを自分なりの季節感と擦り合せて行きました。
もう、何をしていても、頭の中はイケナイ妄想で一杯でした。
某所でそれを呟いていたので、もしかすると、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。




毎年の傾向性、その時々の海況、そしてベイトの回遊、接岸の情況。
私はそんなキーワードをもとに色々と考えるのが好きです。
予想が外れる事は当たり前。
でも、たまーにビンゴ!だと嬉しいですよ。
自分には釣れなくとも、ちゃんとそこに魚が居たら最高です!
とても、まわり道をしているのかも知れませんが、これも一つの醍醐味かと思っています。
まあ、同じ釣師の友人達でさえ、そんな妄想中の私を見て退くかもですが(笑)


とにもかくにも、これはどうしても調査する必要アリ!と行くことにしました。
釣行費!?
あぁ、レーコーディング用の機材を売り払ってつくりました
なけなしのお金を握りしめて出発しました。













まず初めに、今回ほど釣行記を書きたくないと思った事はありません。
覚え書きとしても、自身、当ブログを利用してはいるのですが、これは書かなくとも、嫌でも我が記憶にこびり付きました。
ですから、自身として少ない言葉で綴ります。








初日

職場からの帰宅、用意が遅くなり出発は午前2時前。
南紀到着は午前4時過ぎで、大急ぎで買い出しにコンビニへと向かう。
偶然にもこの釣りの大先輩と会うのだった。
目的の磯は同じであり、ご一緒させて頂く事となった。
現場に到着すると、潮流、波高とも雰囲気満点であった。
しかし、約3時間投げ続けるも何も無い。
魚の気配は 「有る様で無い様」 な感じが続く。
やがて、朝食をとろうかという頃、突如としてはるか沖にて海面が爆発した。
それはまさに、回遊、接岸を信じたベイトを狩る、大本命の魚達であった。
それが確認出来ただけで意味があった。


興奮冷めやらぬまま休憩に入ろうとすると、にわかに磯の周りに違和感を感じるのだった。
自身も、また先輩も何かその予感を肌で感じている様だった。
それからの時間の経過は覚えてはいない。




突如としてそれは起きた。
フルキャストで届くまだ50メーター程先の出来事であった。
キャスト体勢にあった先輩が投げた。
とても届かないと思った。
次の瞬間、硬直する彼の姿が見えた。
奴らの一匹が喰らいついたのだ。
それはまだ続いている。
転がる様にして磯上を走り、自身もそれに撃ち込んだ。
しかし、掛けている彼が気になってキャストを止めた。
すぐに戻り、ギャフをセットして補助にまわる。







先輩のファイトは神がかり的であった。
彼が握りしめているのは、何も特別に強いものではないのだ。
しかし、奴を相手に全く負けてはいなかった。
主導権は絶対的に彼にある。
殆ど、ラインをやってもいなかった。
体感にて、ファイトタイムは約3分ほどだったろうか。
ついに奴が水面にその姿を見せた。
知っている姿形ではあるが、そのサイズは見た事が無い。
今、ここで奴にギャフの一撃を与えるのは自分しかいないのである。
いったい、釣師のどれだけの方が、磯からこの様な魚にギャフを打った事があるだろうか?
その時の心の葛藤を、うまくお伝えする事が出来ない。








彼は落ち着いてみえた。
自身にはこれほどの事は今まで無かったのだが、ともかく大声で声を掛けあっていたと記憶している。
彼はまず、奴に大きく空気を吸わせた。
それで少しだけ静まった様に見えた。

タイミングを見計らい、ついに奴を貫いた直後である!
奴が狂った様に暴れ、一瞬にして振り払われてしまった。


深く貫いたはずのギャフは弾き飛ばされてしまう。
それを見て硬直してしまった。
鋭く尖る二本のそれが、あらぬ方向へと曲げられてしまったからだ!
単独釣行の多い自身ゆえ、セルフランディング時の軽量化をはかる為、ある方を通じて特注で製作して頂いたものであった。
はたして、ギャフの強度であったか、貫く場所を間違えたか、タイミングを誤ったかは分からない。







それにも動じず、彼は再びその時を再現しようとした。
危機感をおぼえたのか、魚はそれまでよりずっと強い力で抵抗する。
深みに潜り、流れに向かったところでテンションが無くなった。
フックアウトであった。












先輩は完全なかたちで奴を浮かせたのだ。
私さえちゃんとしていれば、絶対に獲れる魚だった。
全て自身の責任である。


もし、それが逆の立場であったならと思った。
私のいたらなさが全てであるにも関わらず、彼は自身のフッキングが甘かったと言った。
その、彼の心が余計に胸を刺した。
おそらく、私ならば攻めたてたであろう。
痛いほどの悔しさが伝わって来る。
もし、自分なら・・・。





それから、自身は全く釣りをする気にはなれなかった。
せめて、せめて、もう一度、彼にチャンスが訪れる事を心から願うのだった。
磯上がり後も、私に親切にして下さった先輩。
何と大きい方だと思った。
それ以上に、申し訳ない気持ちで一杯で、ふいに泣き出してしまいそうな衝動を抑えるので精一杯だった。








二日目





もう、何もかも放りだして本当は帰りたかった。
どうして良いか分からず、仲間達に気持ちを打ち明けるのだった。

色々と悩んだが、結果として、今、この場で唯一立ち向かえる自身が退いてはならない!
それが、仲間達の指導であり、また、最終的な自身の結論であった。
それでも、はたして、自身が挑んで良いものか葛藤する。
ともかく、前に進むしかない。
一つでも駒を進めるしかないのだと覚悟を決めた。









磯に乗ってから既に約8時間が経過した。
普段、休まずに投げ続ける私ではあるが、今回は違うものとしてみた。
獲物に対してだけではなく、ベイトにも極力プレッシャーを与えないという事。
キャストは思う最小限にとどめた。



もう、どうにも波が無く、全くもって緩い流れが続いているだけである。
ファーストキャストより、いったい何度、その時を待って夢想したか分からない。
だが、ずっと状況は変わらないのだった。
昨日の事、そして神経衰弱の様なアプローチに心はささくれていた。
当たり前に出来る事、普段、気をつかっている事すらもずさんとなって行く。
もう限界だ・・・。






喰わないヒラマサに向けぼんやりと投げていた。
あと5投、いや、10投して何も無ければ帰ろう。
そんな風に思ったかと思う。

私には、海の時など絶対に分からないのだろう。
何投目だったか、キャストして少しフォールさせていた。
ハッとして、あの、いつも忘れた頃にやって来る感触に薄れた意識が蘇る。
フリーにしているラインが、とんでもない速度で出て行っている・・・。





瞬きする、少しの間にそれを悟る。
ベールを起こしてラインを張り、力の限りにアワセを入れた。
その刹那、あまりの衝撃に、ソルティガのベールは再びオープンとなってしまう!
すぐに戻しきいてみると、出てしまったスラッグが一瞬にして無くなって行った。
そこで、グっと起こしながら追いアワセを入れる。
一瞬だけ沈黙した奴の鼓動を感じた。
有り得ない程の重量感、そして脈動する息吹きがラインを通じ伝わってくる。





ロッドエンドを太ももに、バットに近いグリップを両手で握りしめた。
半呼吸遅れて奴が動き出す。
来い!!
穂先からゆっくりと入り、やがてバットへと移り行く。
耐えきれずに、ドラグが唸りをあげるその時であった!
とても小さく、プンッとした異音が耳に届く。
強引は最早その力を無くし、意味なく握りしめた震える指先を感じるのだった。
外れた・・・。






ヒラマサ狙いのつもりの、そのフックがやられてしまったと思っていた。
巻き寄せるも軽い。
やがて、ヒラヒラと透明の糸が近付いて来た。
ラインブレイクであった。
すぐさま、もう一つのタックルに換えようとするが、無くしてしまったものと同じ動きをするルアーはもう無いのである。
極力、似たルアーを結んだが、もう、二度とは繋がる事は無かった。







帰宅後、切れたリーダーをよく確認すると根ズレの跡があった。
どうやら、軽い気持ちで投げていたジグでの時だったろうか。
軽い根がかりを数度、ジグから約一ヒロまで確認して、傷みは無かったので続投していたのである。
約三ヒロとリーダーをとっているが、切られて失ったのはちょうど一ヒロであった。
ルアーから一ヒロ、その付近にダメージがあった様子である。
これは根本的なミスだろう。
タックルやシステム、想定した限界は高いのだが、その保全、管理に問題があったのだ。
何時間と経過しても、はたして、組み立ての状態をずっとキープしているかである。
そうでは無かったからこそブレイクした。







今回、全てにおいて自身の想定力の甘さに敗れたのである。
自分だけならまだしも、同行者にまで影響する事となった。
ポテンシャル云々とよく聞く。
それを裏切るのがこの海なのだ。
はたして、それは強タックルなだけが万全ではないだろう。
先輩はそうではなかった。
釣り手の力量なのだ。
そう、すべてにおいてそれにつきる。
それを補う少しのものが道具ではないだろうか。



未だ、申し訳ない気持ちでいっぱいである。
いつか、彼の記憶に残る魚の補助に、「もう一度」、まわりたい。
その時には、絶対に間違いなくお力になれる様に精進してまいりたいと思います。



それでは