2月24日の日記













前回の釣行からけっこう間があいてしまいました。

急な仕事が入ったり、体調が芳しくなかったり。

無理をすれば行ける日もありましたが、珍しく、大人な判断で諦めました。




その間、ずっと考えていたのです。

騙す事が出来なかったヤツらの事を。

出口の見えない迷宮に足を踏み入れてしまった様です。






「喰わない!」 と割り切れる様な性格なら気楽かもしれません。


全く、誰も釣る事が出来ない魚なら諦めもつくでしょう。



しかし、そんな事はありません。


目の前で、他の方が釣ったのをこの目で見たのです。

それが、仮にマグレであったにしても、その一瞬、何かがピタリと噛み合ったのでしょう。

私はズレていたから反応させる事が出来なかった。

それが現実だと思います。







自分の中の小さな引出しから探してみる事にしました。

勿論、答えを見つける事は出来ません。

また、ネットで調べても、誰かに教えてもらっても、自身がそれを再現する事は難しいでしょう。

上手い方とはそもそも、その腕が違うのです。




それでも、何日も考えて、いくつかの仮説をたててみました。

僅かなりに道具も変えました。

いくら考えてみても、それを海で試さないならば永遠に分からないでしょう。

そして、下手は下手なりに、自らの手法でそれに近づくしかないのです。




悔しい。

どうしても喰わせたい。

そして、釣り上げたい。


ただ、それだけなのです。



















家を出発し、現地までの道中で今日のポイントを考えた。

いっても、魚が居たのはもう二週間以上も前なのである。

そしてまた、弱い心が生まれもした。


去年の暮れからずっと、一匹の魚も触ってはいないのだから。

頭の中でいくつもの磯が浮かんでは消えて行く。

より、可能性がある獲物を求めようかと。

そんな気持ちが邪魔をする。




多分、それでも、釣れれば嬉しいに違いない。


そしてきっと、次の瞬間に後悔が訪れる事だろう。




何故?逃げたのかと。

貴重なその時間、どうしてあの海に向かわなかったのかと。



釣果が欲しい訳じゃない。

あの魚が欲しいのだ。


















向かった先は沖磯だった。


安直に 「沖磯の方が可能性が高い」 と思っての事ではない。


この20日間ほど、毎日、その海を分かろうと自身のデータを開いていたのだった。




読めるはずのない海である事は十二分に承知している。

しかし、そこから、もう一歩先にある何かを見出せないかと血眼になって探した。

到達する事は不可能だが、今よりあと少しだけ前進したい。

それもまた挑戦なのだ。











渡礁してすぐに一つ答え合わせが出来た。

求めていた潮がそこにあった。

強く、太い流れが磯をかすめて行く。

高鳴る鼓動を抑えきれずファースキャストを撃つのだった。














この日、まず最初に結んだのは、ペンシルの性格が色濃いポッパーであった。

以下はあくまで自身の仮説である。




ポッピング、そしてそのスプラッシュが派手すぎるものはこの海には相応しくないのではないか?



違う海域にて、半ば定説とされているそれを幾度となく使用してきた自身。



結果として、一度たりともバイトを得た事は無い。



しかし、今、まさに投げているそれにはあった。







誠に狭い視野で見ているかも知れない。

他人からそう見えるだろう。

しかし、今はこれで良いのだ。

何故なら 「私の釣り」 において、

 「魚からの反応」 はあったのだから。

なにより、私にとってはそれが間違いではない事の実証と言えよう。











この日は他に二人のルアーマンがいらっしゃった。

その雰囲気から、彼らがベテランである事をすぐに悟る。

おそらく、ただ長くやってみえるだけではないだろう。

かなりの数の魚を獲られてみえたのではと思った。

キャストの合間にそれを垣間見る。











しばらくして、ジグへと換えた頃にそれは突然起きた。

一発の魚雷が瀬へと着弾し、にわかに爆発する。

それを皮切りにして、二発、三発と立て続けにその爆発は起きた。


ヤツが背中を丸出しにして小魚に襲い掛かる。

喜んでいる暇などない。



全速力でフルキャストしていたジグを回収した。

そして、そのままで挑む。

しかし、表層にてジグに反応するヤツの姿は無い。

すぐに送り込み、ベイトの更に下に張り付いているであろう別のヤツらに届ける事にした。

バンバンバンッ!っとジグを跳ねさせるも伝わる衝撃はやってはこない。

ファーストコンタクトは今日も失敗に終わってしまった。













その後も、ヤツらの傍若無人ぶりは幾度となく繰り返された。

陽が昇るにつれ、どんどんと膨れ上がるベイトボールの数々。

幾千、幾万もの小魚達に辺りは埋め尽くされて行った。

しかし、その場の誰も喰わせる事が出来ない。

ベテランと思しきお一人の方はチェイスさせる事に成功したそうである。

しかし、そこから先が無い。




気配が濃厚な時、自身は食欲に訴える様なアプローチで攻めた。

気配が感じられない時、その好奇心やリアクション的な反応を期待して攻めてみた。

一時間、二時間とずっとそれを繰り返して行く。

しかし、全く何の反応も無い。







それでも、食事などの休憩以外、ずっと投げ続けている。

しかし、未だヤツの一匹さえも魅了する事は出来ないでいる。


釣り人のイメージでは、釣るのが難しいと思える海となってしまった。

流れはほぼ止まり、ベタ凪の海が広がっている。

プラグを動かしても、ただただ、不自然に漂い動くのみである。

ジグを放っても、スカッスカッっと空を切る様なジャークでしかない。

まったくちゃんと泳がせている気がしなかった。









それでも、ヤツらの捕食行動が完全に終わってしまう事は無かった。

結果的には、磯上がりのその時まで、長いスパンを要するもののボイルは完全には無くならなかった。

おそらく、その間隔でさえ、単純に奴らの満腹感、空腹感によるものではないかと思う。

腹が減ってきたら襲う。

その繰り返し。

何かの規則性があるには違いないのだろうが、それを理解することは到底かなわなかった。










食べているのに喰わせる事が出来ない。

食べている以上、釣れない事は無いのだろう。

それに、全く合わせる事が出来ないだけで。









悔しすぎる。

もう、ヤツらの事しか考えられない。








それでは