4月30日、5月1日の日記










仕事中、ずっとめまいがしていた。
それにともなう吐き気。
朝から、何度か危ない瞬間があった。
どうか、夜までには治って欲しいと願う。
明日は釣りに行く日である。





そんな中、ビッグニュースが飛び込んで来た!
先輩の、W氏、IGK氏の両名が凄い魚を釣ってみえたのである。

長さは無いが、ともかく、太くて重い!!
具体的な数値にてお伝え下さったのであるが、正直、ピンとこなかった自身であった。
春のこの時期に、いったいどうした事だろう?
私には、産卵をひかえ、やせ細ったイメージしか思い浮かばなかったのである。
誠、無知というものは恐ろしい。









明日の天気予報は雨。

続けて、W氏は出撃されるとの事であった。
自身も釣行予定である事をお伝えさせて頂くと、是非、ご一緒しましょうとお誘い下さった。

とても有り難いのだが、即答が出来ない・・・。
午後を過ぎても、夕方になっても、めまいと吐き気が収まる事は無かった故である。
本当にまいった。

帰宅後、すぐに横になったのは言うまでもない。
数時間後、その最終決断を下す頃。
やっと、回復の兆しが見えたのである。









用意をしながら、窓を叩く雨風の音がどんどん増して行った。
体調不良、そして、内地にいてもの悪天候である。
おそらく、まともな神経ならば行く事を躊躇するだろう。
天気予報を開け、更にその思いが巡って行く。

「強い南風、雨、波高4メートル」

磯に立つ事すら叶わないかも知れない。




最早、私はどうかしているのだろう。
家族には 「深夜の雨のドライヴ」 に出掛けると告げた。
無いだろうと思いつつ、発砲クーラーをもう一つ余分に積み込むのであった。












道中は困難を極めた。

ガラスを叩く豪雨にまったくワイパーが追いつきはしない。
前も見えず、轍にたまった雨水でハンドルが逆を向く。
おまけに、強い横風に、半車線ほど吹き飛ばされるといった具合だ。
法定速度の半分をも満たせない。
高速を走るのは仕方なしのトラックだけ。
跳ねあげる水飛沫が更に到着を遅らせて行く。









現場に到着したのは空が白みだす頃であった。
ドアを開けると不気味な風が舞い込む。
南紀特急から降りると、今度は恐ろしい波の音が聞こえてくる。
W氏の到着はまだ少し先。
もう少し、もう少しだけ明るくなってから出よう。


怖いという心に素直になる。
そんな、待ちの時間もつかの間。
月明かりほどの太陽が昇る頃に歩き出した。
山道はどこも、ぬらぬらと艶めいている。
フェルトピンスパイクではまるで氷上の様。
どんどんと大きくなる轟に胸騒ぎがする。
最後の茂みを抜け、目にうつったのは見たことが無い大波であった。




やっぱり駄目か・・・。





暗闇にもはっきりと浮かび上がる真っ白な水の塊。
波飛沫なんてものではない。
それが磯をかき消している。

立てる訳がない。


それが自身の決断であった。
すぐさま、独り、元来た道を再び歩む。
山道を行き、出るのは溜息ばかりであった。








その後、すぐに車を走らせる。

夜が明けた海はどこも真っ白であった。
唯一、立てそうでいて、陶酔しそうな程のオーラを放っている磯を垣間見る。
パーキングに車を入れそうになり、ふいに様々な事が頭をよぎった。
おそらく、死ぬ。


大袈裟だろう。
はたして、本当にそうだろうか!?
良い日にまた釣りをすれば良い。
何も無ければ、また、次の釣りがあるのだから。




何か所かを巡っている内、忘れていたはずのめまいが再発した。
もう、限界だ・・・。
漁港の片隅に車をとめて眠りにつく。
ウトウトして、遠くに行きかけた頃。
どこかで聞いたメロディーが鳴っていた。
それが、携帯の着信だと分かるまで、どれほどの時間を費やしたろうか。
ディスプレイを見ると、W氏からのコールであった。



「しばらく待ってみて、立てるところは無いかと探しました」

「何とかやれる場所があり、釣れましたが来ませんか?」



確かにそんな内容だったと思う。
氏もまた磯へと下りられ、彼の尺度にて、釣りが出来るか否かを見定めてみえたのだろう。

辛かったので、私はそのまま眠る事とさせて頂いた。
せっかく、こうしてお伝え下さるのに・・・。
とても、申し訳ない気がしたが、どうにも身体が動かない。









再び、その音に目覚めたのは、それからどれくらい経った頃だろう。
氏からの電話が鳴っている。

いつも優しく、人を思いやる氏である。
よほどの事なのだろうと飛び起きた。
寝ぼけた頭では、お話の全てを理解する事は出来なかった。

「ともかく、もし、来れるなら来てください!」


その言葉だけが耳に残っていた。
少し眠ったおかげで、耐え難いめまいは収まった。
全力で磯へと向かう。






















その磯は真紅に染まっていた。



まるで、丸太の様な魚が暴れている。



この様な光景を見た事が無い。






釣り座を譲って下さり、息も絶え絶えにキャストを放った。



気持ちが焦るばかりで、まったく、どうして良いか分からなかった。




やがて、ヒットする!




重すぎて抜けない!!




最初の魚は、W氏がランディングして下さった。




アドレナリン、エンドルフィン、ドーパミン等々・・・。




おそらく、脳内麻薬の全てが出尽くしたに違いないだろう。




奇跡の海であった。
















































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信じられない事が目の前の海で起こっている!
三十分、一時間と過ぎる内、だんだんと目が変になって来ます。
それでも、この一本には思わず唸り声をあげていました。


何という太さでしょう!!

もう、私の中ではこれはです!

信じられません。


やったね!!































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後で判明しましたが、これはオスの個体でした。
拳よりもずっと大きく膨れ上がった胃には、これでもか!という位の数のベイトが詰まっていました。
それでも、貪欲にルアーを襲う。
まるで、喰える時に喰っておかなければと言っている様に思いました。

それは、我々も同じ気持ちだったでしょう。
何ヶ月も通い続け、やっと、一本の魚に出会う。
私にはそんな日常なのです。
釣れる時に精一杯に釣っておく。
海が与えてくれた最高のプレゼントを有り難く頂きました。












メインラインの高切れ。
リーダーブレイク。

それらにともなう、ルアーのロストが相次いだ。
魚がデカく、半端なく重い。
海は荒れ狂い、ランディングには一刻の猶予も無いのである。
掛けては、一瞬にして寄せて浮かせる。
そして、躊躇なく抜き上げる。


きっと、思うよりずっと、大きな負担が掛かっていたのだろう。

ラインシステムだけではなく、金具やフックなど、結んでいた全てに支障が出た。



私は、上記した、その一連の動作が全くうまく出来なかった。
力や重さによるものだけではなく、根ズレによるラインブレイクも多かったと思う。
瀬際まで浮かせても、うまく抜き上げたり、ズリ上げたりする事が出来ない。
怖々とそれをやるものだから、ロッドはもう折れんばかりであった事だろう。
バラシやポロリも多かった。










ラインを新しく結ぶ中、やっと冷静になって状況を見る。

W氏は殆どバラシは無かった。
物が破損した事で、いやおうなしに逃してしまうのみだったろう。

そして、氏が掛けるのは、きまって鰤であった。
目の前の海には、おびただしい程のハマチが狂喜乱舞しているのにである。
ちなみに、私はそのハマチ達へのフッキングミスに悶絶していた。

その様な中、まるで、鰤だけを絞り出すかの様な釣りをしてみえたのである。
使ってみえたその多くは、誰のルアーケースにも一つは入っていそうなルアーであった。
ひとえに、アクションが違う。








おびただしい数の荒ぶる魚達を見て、今回、特に思った事がある。

それは 「魚の色」 であった。

今まで、まじまじとそれを見れたのは 「シイラ」 の姿くらいであったろうか。

気持ちによって色が変わったりは、熱帯魚を飼育していても垣間見る事だろう。



この日、ハマチ~鰤まで。

本当に驚くほど色が違った。

ある時は黒く、また、茶色い魚がルアーを追ってくる。

一瞬、ヒラスズキか!シオか!っと驚いてそれを凝視した。

しかし、それはハマチであり、鰤なのであった。
 



最終的には、尾びれは真っ黄色となって行った。

チェイスする姿にハッとする。

水面に浮かせた個体は金色に光り輝いて見えた。

まるで、キハダマグロを思わせる様な色であった。







































P1030318













先輩方に釣らせて頂いた魚たちです。

誠に有難うございました。

素晴らしい体験が出来ました。

































P1030315













W氏の圧巻の釣果です。
凄まじいの一言ですね!

おめでとうございます。







あれだけ苦しんだめまいもどこへやら。
脳内麻薬のおかげでしょうか。
魚を運ぶ三往復にしっかり汗をかきました。



後編へと続く。



それでは





My Tackles

Rod  MC Works RAGING BULL 100XR-1
Reel  DAIWA SALTIGA Z6000 with Z5000GT Spool
Line  YGKよつあみ PE #4
Leader Prosele nanodaX 80LB