2016年 6月1日の日記









ホームに 「アブラ」 という魚がいる事を知ったのは、
もう、随分と前である。
よく乗った磯で、初めて、その名前を聞いた。
なにしろ、美味しい魚であり。
強い引き、釣り味の方も格別だとの事であった。
その数こそ少ないが、専門で狙う方もみえるという。
まだまだ、知らない、面白い魚がいるものだなと思った。



標準和名は 「フエダイ」 というらしい。
特に、西日本においては。
それら、土地独特の、呼び名が数多く存在する。
ましてや、この手の魚は種類も多く。
よく似た形であっても、まるで違う種であったり。
判別が難しい。
よって、自身は最初に聞いた 「アブラ」 という名前で認識している。


今回はそのアブラを狙ってみたい。






実を言うと、一足早くに、先輩のK氏がこの魚を手にされてみえた。
自身も狙ってみたいとお伝えすると。
快くも、詳細をお教え下さったのである。


夜の釣りがメインになるとの事なのだが・・・。
再三にわたり、言ってきたことではあるが。
私は夜の釣りがとても苦手である。
とにもかくにも、心霊系が恐くてしかたがない。
やってみたいが、いざとなると足が向かない。
磯に下りる段になって、引き返した事さえある。
それが、この魚を狙う事を遅らせた、最大の理由でもあった。



当日は昼過ぎに現地に到着する。
ゆっくりと前準備をして、明るい時間から磯へと向かう。
そうする事で、少しでも怖いのを減らそうという魂胆だ。
まずは、エサを購入する事から始める。
飲料水などの購入も済ませ、用意は万端なはずなのに。
やはりというか、その一歩が踏み出せない。
車で何度も周辺をグルグルして。
海を眺める。
明るい時間だけであれば、すぐにでも、鼻歌まじりで下りているけども。
本番は陽の暮れからであるから。
やっぱり、怖い。


そうこうしていると、天候も移り変わり。
強い南風が吹いて来る様になった。
すぐに波気が出だし。
強い潮流が生まれて行く。
これで、波まで気にしなくてはいけなくなった。
行きたい、行けない。
自問自答は二時間にも及ぶ(笑)
その間、知人にその胸中を電話する。
そして、また、葛藤するのである。
結局、釣りしたい気持ちが少しだけ恐怖を上回った。
海は荒れ、轟々とした波の音が聞こえる。
いざ、決めてしまえば。
それで怯む事はない。
大急ぎで磯へと下りるのだった。









なにぶん、初めての挑戦なのだから。
仕掛けと、エサに関しては半信半疑であった。
先に、クエから始めた事で。
仕掛けについては、そう悩む事はなかったのである。
ワイヤーや瀬ズレといったものも、もう、初めてではなかった。
ただ、はたして、それで釣れるかは分からない。


ある程度、遠投が必要かと考え。
瀬ズレの部分は竿の全長を踏まえ、極力、短めに作って来た。
ハリスにはワイヤーを使用して、気持ち長めにとる。
点在するシモリをダイレクトに狙ってみたいが故に。
針の選択には慎重になった。
よくある、タマン針の使用も考えたが。
より、ネムリの大きい針をメインと考える。
手にしたもので、サイズ、軸の太さなど、自身の感覚に合ったものは。
「キハダ針」 である。
他には、クエ針の方もいくつかと。
そういったものを組み合わせ、数セットを作って持って来た。
なにしろ、根ガカリは避けて通れそうもないので。
仕掛けや錘のストックは気持ち多めにする。


エサに関しては、これも、複数を少しずつ持って来た。
その日、その時々、きっと、好みは変わるだろうから。
反応を見ながら換えて行くつもりである。





私の中の夕マズメの時間帯だけ。
少しだけ、ルアーを投げた。
潮はガンガンに当てて。
ところどころ、渦になったり、鏡の様になったり。
今にも、どデカイヤツが飛び出して来そうなんだけど。
何にも起きなかった。
竿を置こうとすると、少し離れた磯へと。
お一人の方がいらっしゃった。
この方の存在はまさに神であった。
遠いが、とりあえず、人がいるのである。
たったそれだけで、オバケも出にくいだろうという勝手な判断。
ともかく、ちょっとでも安心出来るという。
メンタルの部分の話である。























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急いで、竿をセッティングする。
ただ、もう一本竿が増えるだけで。
きっと、可能性は二倍プラスαになるのではないかという。
浅はかな自身だ。
広い海ではあるが。
おそらく、魚はどこにでも居るとか、やって来る訳ではないだろう。
見えない海底を糸を通じて探り。
気になる部分へとエサを置く。
あとは、信じて、魚が喰らいつくのを待つ。
それが楽しくもあり、間違ってやしないかと。
自問自答の連続なのだ。








激震までには、そう時間はかからなかった。
何の前触れもなく。
一気に穂先が真っすぐになる。
ピトンはきしみ、更に竿は伸びて行った。
走って竿に駆け寄る。
無我夢中で大アワセを入れる!
ガッツリとした手応えを感じた。
そして、全力でリールのハンドルを回す。

強い!!

距離がある分、魚に少し余裕があるのだろうか。
まるで、根を縫う様にして走る感覚が伝わってくる。
時折、ラインがゴリゴリと擦れたり。
根か穴に張り付いたりして。
巻けなくなった。
止めていたり、ラインをやったりして。
動き出すのを待った。

そんな事を繰り返し、とうとう、足下まで寄せて来る。
暴れる魚。
持ち上げようとすると、意外な重量感であった。
もう一度、水面へと戻し。
一気に抜く。






















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感激である!!

まさか、釣れるとは思っていなかった。
なんとなく、その姿を見て。
恐竜っぽいなと。
そう思ったのを、今でも覚えている。
まだ、明るい時間によく見れた事が幸運であった。










もしかしたら、時合いかもと。
そんな風に思う。
どこかから、群れで巡っては来ていまいかと。
急いで、エサを付け直して。
先ほど投げた方角に向かってフルキャストをした。
まさかである。
投げ直したその竿に。
再び、激震が走ったのであった。


竿にたどり着く間もなく。
曲がった竿が反発力で跳ね返って。
ガクガクと揺れている。
一瞬の事で、何が起きたのか分からなかった。
急ぎで竿を手にすると。
まったく、抵抗が無くなってしまっている。
すぐに回収して息を飲んだ。
まさかである。
ワイヤー製のハリスは。
無残にも、途中で引きちぎられてしまっていた。
エサを付け替えた際、傷みはよく確認したはずであった。
本当、とんでもないヤツがいる。






しばらく間を置き。
今度は、もう片方の竿に反応が出る。
ガツン、ガツっと。
叩く様に当たったかと思えば。
少し間を置いて、一気に突き刺さって行った。
この感覚、やみつきになる!


























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たまたま、最高の日に当たったのかも知れない。
陽が落ちる前に二枚も。
ブチ切られてから。
両手、両足ともガクガクと震えを繰り返している。
恐怖にも似た気持ちと。
単純明快なる興奮。
これから、夜を迎えるとどうなるのだろうと。
様々な感情が交錯し、目が霞む様であった。





更に打ち返して行く。
怒涛の勢いはおさまり、何もない海に戻っていた。
時折、ケミホタルを揺らすのは。
小型のウツボが悪さをするくらいの事。
いよいよ、日没の頃となって。
得も言われぬ、違和感を感じる。
もしかしたら、誰かにずっと見られている様な感じ。
最初、気のせいだろうと気にしないでおいたが。
どうにも、変な感覚がする。
ふいに、少し上の方に目をやって。
驚いて、声を上げてしまった。
二度見して、更に恐怖は増し。
腰が抜けそうになる。


普通はあり得ないと思う。
まさかの場所に。
男が独り、体育座りをしてぼんやりと空を眺めていたのである。
そこは、断崖絶壁という言葉がピッタリの場所だ。
一般的に人が降りて、僅かのスペースにしゃがみ込む事なんか・・・。
はたして、あり得るのだろうか!?
とりあえず、足がある事はこの目で確認は出来たけども。
服装はそこへ行くには・・・軽装すぎるし。
なにか生気が無くて。
青白い、うつろな顔をしていた。
生きている人であれば良いのだけど。。。






















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夜と呼べる時間となったが、アタリはまったく止まってしまう。
どんどんと、風は強まり。
海も更に荒れだした。
もう、怖いのは通り越した感がするので。
粘ろうかとも思ったけど。
急いで、クエ師も片づけを始められる。
そして、すぐに撤収をされて。
やっぱり、なんだか上がった方が良いかもと。
竿をたたみ、最後にストリンガーを水から上げるのだった。






















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本当、運が良かった。
初にして、素晴らしいアブラを手に。
K先輩、詳しく教えて下さって。
誠に有難うございました!

やったね!!












次の日、無理を言って、様々に料理してもらった。






















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おそらく、自身が食べた 「白身」 のお造りでは。
最高峰だと思う。
上質な脂が口の中に溶ける。
いくら食べても全く嫌味が無かった。





















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簡単に塩で焼いてもらう。
だけど、とんでもなく美味い。
一気に晩酌が進む!!





















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煮付けがまた最高なのである。
この浮いた脂が物語っているかもしれない。
けれど、しつこくはない。
最後、これでしっかりとご飯を食べて。
最高の夕食は過ぎて行きました。






また、出会える事を願って。


それでは