2012年05月

温故知新

4月25日、26日の日記







磯に行きたくてたまらない!
気持ちを抑えずに行動してみる事にしました。
自身には釣れている話も届きません。
おまけに天候も崩れるとの事。
気にせずに向かいました。









出発予定の24日には予定が入っていた。
職場の食事会であった。
早々に済ませ帰るつもりがダラダラと深夜まで。
そこから準備をしてやっと整ったのは、日付が変わってまだしばらく経った頃だった。
夜明けには間に合わないが、それでも朝から竿を出す事は出来る。
しかし、今回は出発を見送る事にした。
日々の不摂生のせいでとても眠かったのだ。
安全に南紀まで辿り着ける自信が無かった。
居眠り運転もまた恐ろしい。
結局、朝まで4時間ほど眠る事に。
清々しい朝の光を浴びながら荷物を積み込む。
こんな時間に南紀に向かうのは何時ぶりだろう。
ゆっくりと景色を楽しみながら南下して行った。







さすがに日中は車が多い。
追い越し禁止の車線が殆どである42号線では、時速30キロの軽トラックがいても先を急ぐ事は出来ないのだ。
今回も二度ほどそんな場面に出くわす。
それ以外はとてもスムースに流れ、意外にも3時間半ほどで串本町の標識を見る事が出来た。
やがて街中へと辿り着き、飲み物だけを購入してまずは潮岬へと行ってみる。
パーキングに車を停め海が見える丘へと歩いて行った。




昼過ぎだったが、めぼしいポイントには何組かの釣り人がいらっしゃった。
天気も良く、波も穏やかで、正に絶好の釣り日和という感じであった。
しかし、沖を流れるあの潮は見えない。
少し移動するとそこは風裏となっていた。
鏡の様な水面が遠くからでもよく見えた。
ここにも数人の餌師がいらっしゃったが、どなたも全く竿を上げる気配は無かった。
勿論、下り潮が無くとも、全くの凪であってもダメであるとは言い難いのである。
降りてみたい気持ちはあったのだが、その人の多さに移動を決めるのだった。




海を見ながら更に車を走らせて行く。
海とは不思議なもので、たとえ僅かに場所を変えるだけで、また違った顔がそこにある。
風向きこそ変わるが、特に目立って風が強くなった訳ではなかった。
しかし、今、眼下に広がる海には申し分の無い波が寄せているのだった。
よし、今日はここで頑張ろう。
そう思いすぐに磯へと向かった。








やがてポイントへと辿り着くとお一人のグレ師の方が見えた。
他には誰も居ない。
最近はあまり釣果に恵まれていないのだろうか。
タックルを準備しながらいつもの様に海を眺める。
潮位が低く、打ちつける波にも勢いは無かった。
久しぶりに潮を被る事無く釣りが出来そうである。
海は穏やかであったが、海面はよく動いて見えた。
少し沖に目に見えて分かる潮目も走っている。
それ以外の部分もしっかりとして流れている様であった。
どうやら、ここでは南西の方角からの風が吹くと、こうした感じになる事が多いのかも知れない。
過去の記憶を思い出して行くのだった。
グレ師の方にお声をかけると、とても快く隣にどうぞと言って下さった。
どうやら、潮に仕掛けを流して釣ってみえる様子であった。
邪魔にならぬ様、それとは別の方向に向けて竿を振って行った。









最近はご無沙汰であるので、魚の行動がどうなのか全く分からない。
それを少しでも知りたくて今日は来たのだ。
数投で反応を見れるかも知れないし、このままずっと何も無いかも知れない。
そんな懐かしい感覚に自然と顔が緩んで行く。
いつかやって来るかも知れない。
既に何投もしていたが心は焦らなかった。
やっとこうして磯に立てたのだ。
やらなければならない事は山ほどある。
お気に入りのルアーと試してみたいルアーの幾つかをポケットに詰め込んでいる。
その一つ一つをゆっくりと確かめる様に動かして行った。



自身の一軍のラインナップでは、いつも通りのセッティングにて投げてみる。
今日の潮はとても不思議だ。
右から左へと下っていたかと思えば、しばらくすると全く逆に上るのだった。
これには、グレの方も苦労されてみえる感じであった。
風向き、潮の向き、そして波の向きによって、まったく同じ入力でもルアーは別の動きをする。
正直、あれほど体に覚え込ませたこの感覚を、今は殆ど忘れてしまっているのだ。
まったく情けない話である。
しばらくはそれを再び覚え込むだけ作業となった。



続いては、今回、新しく用意してきたものを投げて行った。
新しくとはいえ、何も今日の為に買い揃えたものばかりではない。
新たに購入したものは二つであり、あとは以前に試して上手く使えなかったものばかりである。
結果、この取り組みは自身としてとても価値あるものであった。

こんなアクションが好きだ、また、こういうアクションに魚がヒットした。
そんな自分なりの定番が強くなり過ぎてしまい、最近、どうにもワンパターンとなっているのが悩みであった。
確かに良い時、否、ある条件下においては、それらはうまく合致してヒットという結果を生む。
逆をかえせば、条件が違うならば結果が出ないという事。
ある日には全くだった事が、違う日には最良であるといった事もあるだろう。
釣りに通う方なら誰でも知っている様な事でも、時として自身は見失う事が多い様に思う。
それ故に、自身としておかしいと思う様な動きでも試し続ける事にしたのだ。
釣った事のあるルアーに頼るのも良い。
しかしまた、釣れなかったルアーを、釣れるルアーへと転換させる事も大事にしたいと思う。
それはルアーだけにあらず、こんな、〇〇〇でも釣れるのだという経験をもっと増やして行きたいものである。


今回、新たに購入した二つのルアーについては、正に目からウロコものの発見があった。
おそらく、5年、いや、10年よりもっと前に生まれたものかも知れない。
それに、今の金具とフックを自分なりのバランスで組みつけてみた。
すこぶる面白い動きをするのだ。
いつか、苦手なポイントにて釣ってみたい。
また一つ夢が増えたのだった。







夢中になってロッドを振り続けているといよいよの時間となる。
おそらく、予報通りに明日は雨となるだろう。
日没にはまだ早いが、鉛色の雲が空を覆いあたりは暗くなって行った。
潮もどんどんと満ち始め、時折、打ち寄せる波に足場があらわれる。
ラストチャンスと一投一投、気持ちを込めて撃つのだった。
しかし、何度キャストを繰り返しても反応は無い。
殺気が出てやしないかと、その間も凝視はせずに極力色々なところに目を向けて行く。
目を塞いで待ってみたりもした。
しかし出ない。
陽が落ちて、隣のグレの方はとうとう上がられてしまった。
それでもまだ粘る。
完全に暗くなる少し前に竿を置いた。
結果は撃沈の二文字ではある。
しかし、心は暗くは無かった。
やり切ったのだから。
そして、今ここには自身に釣れる魚は居ないのだと知った。
ここまでやって釣れなかったならば満足である。
なかなかそう思えないのだが、この日は心からそう感じる事が出来た。









磯から上がり食事を済ませる。
すぐに向かったのは漁港であった。
以前、水面にてバラしたあの魚が忘れられないのだった。
しかし、根魚からの反応は皆無であった。
水面にはおびただしい程の夜光虫が漂っていた。
今までの釣りでは、この夜光虫の中で良い経験をしたためしがない。
嫌になってきて、いざワームを回収しようとしてふいにコツンっと当たるのだった。
乗らなかったが一体何の魚だろう?
同じ風に再現するとまたすぐに当たって来た。
その後も何度か出るのだ。
決ってボトムからのハイスピードでの巻き上げに反応する。
所謂、ショートバイトというのか、コンっとしか触れないのであった。
意地になってやっていると、いつものブルブルしたあの感触が伝わって来た。
残念ながら宙で外れてしまったが、それは紛れもないアジであった。
フォールでも水平リトリーブでも全く反応はしない。
巻き上げる際、水深が約2メーター以浅となるとバイトしてくる様子である。
係留ロープに囲まれた、約1メートル四方の狭い場所であったが、何度も何度も当たるのであった。
面白がって続けると何匹かは釣れた。
しかし、どうにも面白みに欠けた。
おそらく、三重でやるいつもの釣りと大きく違ったからであろう。
気になってこの場所、この日のみのパターンかと愚痴をこぼすと先輩がメッセージを下さった。
すると三重も同じ様であったという。
魚とは誠に不思議なものだとつくづく思うのだった。


更に場所を変えてやっていると大粒の雨が当たって来た。
みるみる内に強い風が吹きつける。
粘る気になれずに眠る事にした。
おそらく、明日は磯に立つのは難しいだろう。
風が収まるのを祈りつつ深い眠りへと落ちて行った。







目が覚めると外は小嵐の様であった。
海に向かうとやはり大時化である。
いくつかまわってみたが、どこも安心して立てる場所は無い。
否、ポイントまでのルートでさえ危ういのだった。
先日の時化の際に立った磯まで戻る。
そこにはあのハッチバックが停まっていた。
遠くからそこを見て気持ちは決まった。
私には無理だろうと。
今から帰れば、何とか午前中の間に帰宅する事は出来る。
しかし、せめてもう少しだけ竿を出したい。
たとえ漁港であっても、あと少しだけやりたかった。
そこで、昔に投げ釣りをして良い思いをした場所に向かった。
吹きつける風に雨と潮が容赦なく私に降り注ぐ。
ゴアの合羽を着ていてさえ、10分も経たない内にズブ濡れとなってしまった。
まったく、何て日になってしまったのだ。
釣り辛いがどうしても試してみたい。
アイツをどうしても狙ってみたかった。
辛抱強く繰り返していると、小さくコッとした感触が伝わる。
間髪入れずにアワせるとギュンギュンと走り潜るのだった。
気持良い。
満足の釣りが出来た。























P1010838

とてもカワイイですがチャリコが釣れてくれました。
さすがお鯛さん!
良い引きしてくれます。























P1010840

やったね!
チョット可哀想ですがナイスな塩焼きサイズ。
大事に大事に持って帰るのでした。







やっぱり南紀は良いですね。
月に二度くらい来れる様に仕事も頑張りませんと。


それでは





アジ調査

4月17日の日記







前回の釣行でのアジ撃沈はショックでした。
魚は居るはずなんですが全く釣れませんでした。
ベイトが変わったのか、はたまた他に原因があるのか?
考えても分かりませんから、もう一度、確かめに行ってみる事にしました。










現場には零時頃に到着する。
どうせ朝までやるのだからと潮なんて気にしない。
いつか良いタイミングが来る事を期待して粘ってみる。



しかーし、いつまで経っても変化は無い。
勿論、その間も手をかえ品をかえで、一生懸命に頑張っているのである。
現場は無風に近くベタ凪だった。
浮遊物も全く動きはしない。
街灯の光が一番よく当たる場所には、体長2~3センチの赤茶色の小魚が何百、何千と集まっている。
その周辺でたまにライズはあるのだが、キャストしてみても反応は得られなかった。
もし、それがメインベイトであるならば、もっとライズがあっても良いし、表層に魚の姿が見えてもおかしくないだろう。
十数分に一回といった感じで、パシャっと水面に出る位であった。



やはり、主食としているのはアミであろうか。
その様に考えてアプローチしてみるのだがアタリは出なかった。
おそらく、私のルアーは魚からは全く別のものに見えているのだろう。







それでもずっとキャストを続けて行った。
途中、ここにアジは居ないのではないか?と本気で思う程であった。
一体、何投したであろう?
スローで繊細な釣りが嫌いになる程に頑張った。
どうしようもないので、一発逆転を狙いアピールの強いワームを投げてみる。
私はトウゴロウですと言わんばかりに動かしてみた。





























しーん。







やっぱり、小一時間やっても何も起きない。
ならばと、ここで自身が知る唯一のメバルスポットに立つ。
陸から見ても何の変化もない場所。
だけど、何故かそこに居るのである。
漁港というのは誠に奥深い場所だと、最近は切に思うのだ。
そんなハニースポットをいかにして見つけるかだろう。
竿抜けは何も僻地にだけあるのではない。






















P1010835

つらい中でのヒットは嬉しかったです
やったね!






















P1010836

メバルって実際よりも大きく見えるんです。
デカいかもと思いましたが、26センチちょっとでした。











再びアジに戻るがやはりまったくである。
夜明け前となり少し移動してみる事とした。
しかし、やはりそこでも何も無かった。
かくなるうえはアオリでも!
いや、そんなに甘くはない。























P1010837

あがって来たのはスレンダーな方でした。
おまけに単発で後が続かず







今回もアジは撃沈でした。
本当、ヘタです。

それでは


模索

4月12日の日記






旅先での釣りは、心の霧を一気に晴らすものでした。
それは、単に新鮮であったというものでは無いと思います。
自分でも詳しくは分からないのですが、おそらくは白紙の状態に飛び込んで行った事が大きいと。
勿論、過去の自分とは違いますが、あの時、初めて磯を目指した気持ちが蘇った気がしたのです。
難しい私ですので、正直、今も思う事は色々とあります。
その全てを整理するのは無理だとも。
それでも、やはり磯に立ちたい。
心のままに進むしかないかも知れません。








帰国後、色々と自身の釣りを考えるのだった。
少しばかり長く続けると、決まっていつも澱んでしまうのが我が心である。
おそらく、自分本位な価値観を構築してしまうのだろう。
そしてまた、忌み嫌うべき、「慢心」、をも生み出しているのだろうか。
いつも気をつけているつもりでも、やはりそうした気持ちに気付きゾッとする事がある。
いわんや、私は純粋でも善良でもないのだろう。


様々な事を思いながら、混線した思考を紐解いて行く。
シンプルに、今の自身の釣りには何が欠けているか?
ぼんやりと考えながら過ごしていたある日、ある一枚の写真が目にとまったのだった。
それは、私が尊敬するある著名なアングラーのものであった。
荒れ狂う波の中、今にも消えてしまいそうな岩の上に立つ姿がそこにあった。
思えば、何度も危ない思いをし、最近では凪の海が好きであると公言するほどの自身である。
どこまでが凪で、どこからが荒れなのかは、個々人の感覚ではあろうが。


最近の日記を見るといつも決ってこうである。
風が強く、波のせいで自身の釣りがうまく展開出来ない。
勿論、どうしようもない日もある。
しかし、その殆どが、自身の腕の無さを覆い隠す為の表現では無かったのかと自身に問うた。
述べるまでもなくそう思った。
ただの言い訳だと。
ただし、やみくもに危険な海に向かう様であってはならない。
事故を起こし他人に迷惑をかけたり、我が身に何かあっては本末転倒なのだ。
そこに、今の私が向かうべき道があるのではと思った。
おぼろげな感覚を抱きながら釣行の日となった。








久々の連休とあって心は南紀の海へと向いていた。
指折りその日を待ったが、前日の天気予報に期待は諦めへと変わる。
強い南の風、波は4メーターの予報であった。
実際に海に向かうと、この波高というのはリアルでない事も多い。
しかしおそらく、今回のそれは遠からずであろう。
波が何メートルあるかが大事なのではなく、立つ場所が波に消えて無くならないかが肝心なのだ。
自身が好きな磯の殆どは消えてしまう。
今までの経験から、ほぼそれは間違いないだろう。
出発を見合わせ、波が落ちるのを家でひたすら祈るのだった。


夜になって予報を見ると、少しずつ回復の兆しが見られた。
ともかく、行ってみなければ分からない。
陽がある内に準備をしてあった道具を南紀特急に積み込む。
この時、自身の打算的な心には蓋をした。
ともかく海へ。
いつもより、うんと早い出発となった。









南紀への到着は日付が変わる少し前であった。
長時間の運転に変に目が冴えてしまい仮眠は出来なさそうだ。
少しだけ竿を出そうと、メバルがいる小場所へと向かった。
竿を出し糸を通そうとするが、強い風になびいてしまいなかなかうまく行かない。
向かい風となる場所を選び釣りを始めるのだった。
何投かしていると、コツっと小さなアタリが出始めるのだがうまく乗らなかった。
一瞬だけ掛かるとブルブルっとして外れてしまう。
どうやら魚がとても小さいのだろう。

構わずに続けていると、変則的なフォールを生む為にとったラインスラッグがすっと入った。
すぐさまアワセを入れると、かなりの重量感と共に一気に突っ込んで行く。
きた!っと思いすぐに巻き寄せようとするが強くてうまく行かない。
体勢を変えてポンピングにて巻き上げるのだった。
さすがにこれには抵抗出来ずに魚は浮いて来る。
夢中で巻き寄せていると更に重みが増した。
負けるか!とより強く巻くとプンっとした感触が伝わり、凄い勢いでジグヘッドが自分めがけて飛んで来た。
はっとして海を見ると、水面に赤黒い姿が浮いている。
一瞬だけヨタヨタするとすぐに潜って消えてしまった。
どうやら、夢中になっていて魚が浮いた事に気付かず、更に巻き続けてしまった様だ。
暗くてよく見えなかったのもあるが、全く情けないミスである。
逃がした魚はとても大きかった。
その後は反応も遠くなったので止めて移動する。
磯への駐車スペースに向かった。





車を停めて外に出ると、ここもまた強い風が舞っている。
風の音に少し打ち消されている様だが、遠くからは波の轟音が響いて来るのだった。
辺りは真っ暗闇であり、その場所には他に車は無い。
時化ている海に一人向かうには心細すぎる。
日が昇り始めるまでは動かない方が良い。
そこは自分のペースで良いと思った。
他の誰かには平気な事であっても、実際に危険に向かうのは自分なのだから。
何かあった時に対処できる自信は全く無い。
潔くも夜明けまで眠る事にした。

やがて目をさまして外を見ると、ほんのりとした朝焼けの空が広がっていた。
目を擦り煙草に火を点けてぼやけた頭を覚まして行く。
するとよくお見かけする一台のハッチバックが目にとまった。
今まさに磯に向かおうと道具を整えられている。
煙草を吸い終わる頃には、もうその姿は見えなくなってしまった。
おそらく、10分も経たない内に先端へと着かれる事だろう。
他にアングラーの姿も無い為、ゆっくりと装備を整えて磯へと降りて行った。







やがて、海が見えるところまで来て足が止まってしまう。
眼下に広がる海は、まるで大きく膨らんでいるかの様だった。
勿論、膨らんでいるのではなく、ウネリの一つ一つが馬鹿デカい為にそう感じたのだ。
何度も訪れてはいるが、こんな海を見たのは初めてだった。
多少の波気がある日でも立てる場所は水の中にある。
はたして立てるのか!?
残念ながら今いる場所からは分からない。
進む以外には無いのである。
陽が昇ってからで本当に良かったと思った。
暗闇であればこの海は見えなかっただろう。
打ち付ける波の音は実にそれ程でもないのだ。
波が低い時にさえ、もっと大きな音を聞いた事は多い。
何故そうなのかは分からないが、感覚や聴覚だけに頼るべきではないのだろう。
やがて最後の難所を越えるとすぐ、頭上から大量の海水が降ってきた。
これには驚いた。
その向こうには高い岩壁があったはず。
それをも超える波が打ち寄せているという事に他ならない。
更に覚悟を決めてよじ登って行った。







やがて先端に着くと先行の方の荷物が見えた。
自身もその辺りに荷物を降ろす。
人影があったので少し近づいてご挨拶をさせて頂くのだった。
いつもであれば、今いる場所よりももっと下が釣り座であるはず。
それもそう、ここは大きな岩山の頂上であるから。
少し先に進み、海を覗き込んですぐに理解出来た。
普段の立ち位置はそこに無かった。
内向きの場所を見ても同様である。
海面から、およそ5メーターまで足場は終始波を被っていた。
ともかくといった感じでタックルをセットして行く。
そして、ふいにフラッシュバックの様にある場面が脳裏に浮かんだ。
前途したあるアングラーの姿であった。
これだ、きっとこれかも知れない!
吹き付ける風、荒れ狂う海、波飛沫は霧の様にあたりを覆い尽くす。
自身のセカンドステージが幕をあけた。









濡れてとても滑りやすい岩を這いつくばって進む。
少しだけ降りないならば、ルアーを当てずに回収する事が出来ないからだ。
おそらく、そこに波の直撃は無い。
高くまで這い上がる波に、時折あらわれてはいるが立てなくはないだろう。
ゆっくりと降りて行ったところで気がついた。
すぐ隣の、更に一段高いてっぺんにみえる先行者のロッドが曲がっているのだった。
先程まではジグを投げてみえて、確かトップに結び換えたすぐの出来事だったろうか。
手にされている美しいロッドは、おそらく自身と同じブランドに見えた。
何事も無いかの様子で応戦をされてはみえるが、ロッドの曲がりはけっこうなものである。
何よりもこの高さからいかにして喰わせたのか!?
また、どうやってランディングしようというのか!?
固唾を飲んで見つめるのだった。


すぐに魚は浮いた様だった。
そこから魚を回して来て内側まで寄せてみえる。
この時、不運にも連続した大きなウネリが沖から来ていたのだ。
やがて到達すると、瀬際での波の高低は数メーターにもなった。
無茶苦茶になった波の中に浮かぶメジロはまるで木の葉の様に見えた。
メジロは何メーターも上になったり、下になったりを繰り返している。
一瞬のタイミングをみて走りだすメジロ。
魚もまた驚いているだろうが、泳ぎ逃げようとする事は奴らの本能だろう。
しかし、そのアングラーは冷静にそれを操っている。
有り得ない場所、有り得ない高さまで打ち上げられた魚。
時に強引にパワーで寄せてみえた。
ラインもリーダーも磯に擦れて、ガリガリとした音が聞こえてきそうな程である。
波は収まらないが、それでも足下まで魚は寄った。
私は降りたばかりでギャフなど持ってはいない。
また、焦って身体が動かないのだ。
どうしよう!?
するとその彼は抜き上げの態勢に入ったのである。
いくらなんでも、彼が立つ頂上までは難しいだろう。
まず、ともかくといった感じで、海面から2~3メーターの岩の上に魚は乗った。
しかし、勿論の事、魚は暴れるし、そこは荒れ狂う波が被っている。
とてもではないが、頂上から移動している様では間に合いそうもない。

そこで、勇気を出して問うてみた。
よければ、お手伝いさせて頂きましょうかと。
何故に勇気がいるか?
不慣れな自身のせいで、もし魚を逃がす様な事があれば大変に申し訳ないからである。
頼むとおっしゃったので、更に一段降りてリーダーを掴むのだった。
波を被り、腰より下は一瞬でズブ濡れになってしまったが、そんな事はどうでも良かった。
何とか無事に魚を上げたいの一心であった。
グローブごしに手に喰い込むリーダー。
躊躇せずに一気に手繰り寄せた。
丸々としたメジロが姿を見せる。
暴れるそれを両手でしっかりと押さえるのが精一杯であった。
何とか無事にメジロは彼の手中におさまったのである。







一息ついて自身も釣りを始めた。
いざキャスト体勢に入ると、そのあまりの足場の高さに強烈な違和感を感じるのだった。
いつしか、ルアーの操作のしやすさを優先して、なるべく低い磯に好んで入る様になっていた自分がいた。
そしてまた、ここは過去に体験した事が無いほどの高さでもあった。
まず、お気に入りのポッパーからキャストして行く。
強風だが風向きは悪くなく、心配していた糸フケは無かった。
しかし、その殆どがミスポッピングとなってしまう。
極力ラインスラッグを出してアクションさせるがそれでも足りなかった。
重量の調整は普段の足場の高さを想定してのもの。
道具によって合わせる事に期待は出来ない。
それに合わせる自身の腕も無く、早々にルアーチェンジとなった。

次にミノーを用いたのだが、安定して泳ぐフローティングでは向かい風に勝つ事が出来なかった。
また、シンキングでは殆ど泳がせる事が出来なかった。
ウネリと流れがとても強いせいである。
シンキングペンシルも投げてみたが、どうにも沈もうとはしてくれなかった。
ゆっくり巻いてもすぐに水面に姿を出してしまう。
そして、自身の腕では魅力的に動かす事が出来ない。
結局、ジグで攻めるしか出来なかった。





いざ、ジグに換えてもなかなか難しい感じだ。
潮流が複雑であり、投げる場所によっては着底までに大きく流されてしまう。
ラインだけが流されて行き、ジグがどこにあるかも分からない。
何とか緩みにめがけキャストを繰り返して行くが、魚からの反応を見る事は出来なかった。
しばし竿を置き、隣の彼の操るルアーの動きを見せてもらった。
それは私には衝撃であった。
全く自然に、水面を魅力的に泳いでいるルアーがそこにはあった。
キャスト方向は風を横から受ける方向である。
ましてやこの足場の高さである。
私より更にヘビーなタックル、そしてラインシステム。
俗に言われる不利な状況など彼には関係が無いのだろう。
私の釣りとは全く次元が違う。










その後しばらくして、彼は帰り支度を始められた。
それはおそらく、時計を見ての判断ではないだろう。
彼なりに探り尽くされ、今日の海を見切ったという事かと自身は理解した。

例え少しでも分かりたいので、今まで彼がいた場所に立ってみた。
そこに立つだけで、軽くめまいがするほどの高さであった。
とてもではないが、怖くてフルキャストをする事など出来なかった。
そしてまた、全くもってまともにアクションさせる事が出来ない。
岩に当てずにルアーを回収する事も出来なかった。
幾つかのルアーが傷つき、割れてしまった。
ジグもまた、塗装が剥がれ曲がってしまうのだった。
しかし、それでも心は清々しかった。
まさに、この日、この海、このタイミングで彼の様なアングラーと出会えた事。
そして、たとえ僅かでもその釣りを垣間見れた事。
私はなんと幸運なのだと感じた。
出来ればこの先、精進して新しい扉を開き行きたいと強く思うのであった。



南紀の海を早々に後にして、帰り道にはアジ修行をしてみた。
この日、自身に釣れるアジはいなかった。
小物の釣りも誠に難しい。






















P1010824

可愛いっ


















P1010825

















P1010828



ガシラさんに癒されて納竿となりました。
経済的に自由にいかないのですが、これから夏に向けてまた磯の釣りを頑張って行きたいです。



それでは






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