「魚探し」
これが、実に悩ましくも楽しい。
私は毎日、海の事を考えている。
自分なりのデータを紐解き、魚が入ってやいないかと夢想するのだ。
きっと、その大半はとりとめもない妄想が殆どだろうが。
思考する事。
それは、まぎれもなく、自身の釣りの醍醐味である。
その意味では、家にいてもどこにいても、ずっと釣りをしている事になる。
まったく、呆れるほどに好きなのだろう。
いつもにも増して、今回の釣りはそうであった。
時には、半時間もあけずにデータを読もうとした。
きっと、タイミング的にはドンピシャではないだろう。
されど、遅すぎる事もない。
体調不良などを気にしている時間は無いのだ。
明日が休日である事に感謝し、南紀特急のイグニッションを回した。
磯へと下りて、聞こえる波の音に迫力はない。
もう、充分に海は静けさを取り戻している。
はたして、潮はどうだろうか?
闇の中では、まだ、それをうかがい知る事は叶わない。
誰もいない磯でゆっくりと夜明けの時を待つ。
秋も深まって来て、じっとしていると身震いが出る。
気温は低い。
はたして、その震えが寒さによるものか。
これからの釣りを思ってなのか。
やがて、空が薄紫に目を覚ます頃、ロッドケースに手を伸ばす。
ルアーを結び、最後にドラッグを決める。
気持ちは既に最高潮だ。
あと、5分が待ち遠しい。
まだ、暗い海に向かってキャストを放つ。
一投、一投と、ラインをほぐして行く様な気持ちでゆったりと。
同じ力加減だが、回を重ねるごとに飛距離は伸びて行く。
まずは、素直に巻いて、ルアーの潮咬みを確かめる。
ピッタリという実感は無いが、はたして、竿を使ってみてどうなのか。
多少の難しさは仕方がない。
ここは、自身が苦手意識を持つ磯。
全てが難しく思う。
より、楽に泳がせられるルアーもある。
しかし、それでは良い反応を見れそうには思えない。
難しいがこれでいい。
コイツで出してやる。
バシュッ!
もしや、外したか!?
そう思い始める光量、陽の高さになってのヒットだった。
よし、ともかく、群れは入っている。
サイズは可愛い丈のハマチといったものであるが。
ともかく、喰い方が獰猛であった。
ルアーの下から、5~6匹が湧き上がって奪い合うのだ。
そして、激しく水面を割る。
二本ほど釣り上げたところで、苦手なシンペンへと結び換えてみる。
キャストして、まずは少し沈めて引くも反応は無い。
水面下、ギリギリをゆっくりと泳がせると、どこからともなく黒い影が飛んで来た。
一気に数は増え、群れになって追いかけて来る。
瀬際まで来てハッとした。
グッドサイズのシオの群れだったからである。
依然、ハマチは粗ぶっているのだが、彼らはこのルアーには反応しなかった。
シオだけが二回追って来たのみであった。
食べているものが違うとは考えにくいが、何か好みが違うのかも知れない。
釣る事は叶わなかったが、誠、興味深いではないか。
再び、ルアーをもとに戻す。
そして、そろそろかと温存しておいた瀬の上を通す。
ジュポッと喰い込むのが見えた。
出方こそ大人しいものであったが、コイツがかなりキツい!
ハンドルは巻けないし、リフトしてもなかなか浮こうとしないのだ。
グンッ、グンッ、っと穂先を絞め込んではそこに留まろうとする。
いかんなと思い、本気で力を入れた矢先にテンションを失った。
残念ながら掛りが浅かったのだろう。
痛恨のフックアウトであった。
その後もハマチの反応はすこぶる良い。
陽が高くなるにつれ、追ってくる数はどんどんと増して行った。
ただ、どうした事かヒット率はぐっと落ちてしまう。
揉みくちゃになって、ルアーへとアタックはするのであるが。
ガツンっとフックアップしないのだ。
自身が下手なのか、ルアーが合わなくなって来たのか。
ともあれ、なかなか喰い込まない。
これらの魚は、どうやら潮の変化に多く集う様であった。
広範囲へとキャストの手を伸ばしてみたが。
違和感の希少な海面においては単発、もしくは少数でのチェイスが見られた。
ひとたび、流れの際立った場所へと投げると凄い数が反応する。
ここで、ちょっと手を変えてみる事にした。
盛んに反応するハマチ達は魅力的だ。
しかし、どうしても、先程の感触が忘れられないでいた。
出来れば、より大きなヤツとつながりたい。
そこで、煙草に火を点けてしばし考えてみる。
一瞬の事ではあったが、良いサイズの何かの時は手先が違った。
瀬からなるべく遠ざけたくない故の事。
それを思い返し、仕切り直しとしてみる。
ゴン!!
ここだと思ったフィーディングスポット、アクションにて捉える事が出来た。
セクシーなボディカーブを描くメジロをあげる事が出来た。
ハマチのバイトは激減した故、それなりに効果はあったのかも知れない。
しかし、反応はそれっきり。
もしかすれば、メジロの群れはもう去ってしまったのかも知れなかった。
おそらく、ハマチ達に奮闘していた時にも。
メジロ達はそこにいたのだろう。
メジロに対しアピールが弱かったか。
ハマチを先に狂わせてしまったか。
ともかく、少し気付くのが遅かった様だ。
時は経ち、海は一気に静まって行く。
より、アピールのありそうなペンシルに換えると。
それでも、数キャストに一回はハマチが単発で反応をする。
しかし、ぐっと難しくなってバイトは遠い。
落ち着いて海を眺める。
家で予想した海とは違った。
波は落ちすぎているし、何より、潮色が違う。
エメラルドグリーンに乳白色を足した様な濁り。
そんな潮に満ちていた。
もし、求める潮が当てていれば。
しかし、それを離れた場所で知る術は無い。
いつの日か、合致するのを願うばかりである。
とはいえ、最後まで諦める事は無かった。
傾向性などと思い込んではいけない。
通う程に積もる澱を払いのけるのだ。
僅かしか通さなかった瀬に竿を向ける。
バシャ!っと上がる飛沫。
水面へと浮かび行くその姿に胸が高鳴った。

やったね!!
ヒレナガシオが釣れました。
もう、嬉しくて嬉しくて。
飛び上がって喜んでしまいました。
やっぱり、彼が大好きです。

釣れてくれて本当に有難う。
今日も様々な事を教えてくれました。
氷が心もとなくなったので納竿です。
海と魚に一礼して磯を後にしました。
家での釣り。
そして、答え合わせの釣り。
間違える事ばかりではあるが。
釣れた時の喜びは大きく深い。
叶える為に。
今日も海を想う。
それでは
My Tackles
Rod MC Works RAGING BULL 100XR-1
Reel DAIWA SALTIGA EXPEDITION 5500H
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Leader Prosele nanodaX 130lb