10月11日、12日の日記







秋の海にとても苦手意識を持っている私です。
おそらく、去年の秋シーズンに苦しんだからでしょうか。






磯青物を始めた一昨年の秋の事。
今思えば、ツバスの当たり年であったかもしれません。
分からないながらも、磯に行けばこのツバスに出会う事が出来たのです。
プラグ、またジグと、投げるルアーに関わらずにヒットしてくれました。
そう、この、「ROCK'N'ROLL FISHING」、を始める少し前の事でした。
色々と試してすぐに結果が出る、そんな日々にどんどん気持ちは加速して行きました。
しかし、そんな日々は長く続く訳はないのです。
年が変わり、ショアからはツバスが消えてしまいました。
否、正確には、私には出会う事が出来なかったのです。



それから約一年もの間、私を含め、釣友の殆どもまた、ツバスと出会う事はありませんでした。
去年の春にはお祭り騒ぎがありましたが、私の様な普通のアングラーには、うまく釣れればハマチ、時としてメジロといった釣果であったと記憶しています。
個々人の魚のサイズに対しての尺度が違う為、出世魚の呼び名には微妙なニュアンスの違いがある事は否定出来ないかと思います。
それにしても、所謂、ツバスがなかなか接岸しない海であった様に思います。



しかし、今年はまた、そのツバスがショアラインに姿を見せている様です。
数度の大きな台風の通過後、各地でツバスの釣果の報告がこの私にも伝わりました。
かなりの大釣りをした友人もいたのです。
また、ツバスの釣果に加え、良型のシオ、また、時には単発ですがヒラマサの釣果も聞こえてきました。
まさに釣る人は釣っている。
そんな幸運な方々にとって、青物の秋らしい海が広がっていたのです。





そんな好況とは全く無縁の私。
自身が向かうその日には、まったくもって平和な海がそこにありました。
金銭的障壁が理由で、青物釣りにクールでいようとしましたが・・・。
やはり、どうにも心に火がついてしまったのでした。
前回の日記にも書きましたが、悔しくて悔しくてたまらないのでした。
もう、後先考えずに単独での出撃を決めたのです。
今回はその二日間の行動を綴ってみます。








日付が変わるその頃、南紀特急に点火する。
幾重にもわたる激走の日々にやつれてしまった愛車であった。
部分的なオーバーホールを施したのだが、それでも老いを止める事は出来なかった様だ。
三気筒の内、まっとうに動作するのはその二つのみである。
正確な圧縮を見ても、最早、2.5気筒となってしまった。
足りない分を無理矢理にターボの過給が埋めて行くのだ。
おそらく、そのシワヨセは大きく、静かに南紀特急を蝕んで行くだろう。
しかしながら、今の自身では何もしてやれないのである。

今回、自身が決めたテーマは、「開拓」、であった。
勿論、本心を言えば、喉から手が出るほどに魚に会いたいのである。
それならば、カタく、魚がいる場所に早くから入れば、その可能性はグっと高まるだろうか。
しかしながら、それで満足できない気難しい自分をよく知っている。
厄介なプライドなどはさておき、現実的にも、下手な私がそこで勝負など出来ないだろう。
我々には難解な決まった法則にのっとり、接岸し回遊する奴らは、もう嫌というほどルアーを覚えてしまっているのではないか?
単純に言うと、プレッシャーを感じているのではないだろうか。
明確な理由は何も無いが、無性にそんな気がしてならない。
出ても単発とはよく聞く言葉だが、はたして数が単発なのか疑問が残る。
それよりはむしろ、数は多いが、ルアーに反応し、更に喰う個体が、「単発」、なのではないかと思うのだ。
しかし、それとてただの仮説の一つであり、水中で実際に見た事実ではない。
真実に近づく為の、微々たる一歩をただ踏み出すのみである。






日の出まであと一時間という頃、目指すポイント近くに停車した。
私が知らないだけかも知れないが、そこでの青物のルアーによる釣果を聞いた事はなかった。
かなり前の事だが、航空写真とにらめっこをし、釣れない釣行の後に付近を見て回った事があった。
その時、とても気になっていたのだが、他に行ってみたい磯があった為に後回しとなっていた。
その後も、シラミ潰しに足を運び、とうとうあと数か所の開拓を残すのみとなったのである。
誤解の無い様に書くが、それは僅か狭い範囲の事である。

夜が明けて来た頃、一通りの用意を整えて向かった。
しばらく歩いて、やっと磯に降りるその場で足が止まってしまう。
ヘッドランプにうつるそこには、悠々とした潮の流れがあったからである。
この日は大潮であり、満潮まであと僅かという頃であった。
初夏に同じタイミングで立ち寄った時とはまるで様相が違ったのだ。
およそ、自身の胸から肩までの水位に見える。
とてもではないが、そこから先に進む気にはなれない。
この時、すでに空は茜色となっていた。
秋の大潮を計算に入れていなかった単純なミスである。
このままでは、せっかくのチャンスタイムに間に合わない。
すぐに引き返し、苦し紛れにそこから僅か先のポイントに向かった。





ポイント近くの駐車スペースには、すでに何台かの、「らしい」、車達があった。
他にも一見して餌師と分かる数台が停まっている。
おそらく、何かしらの釣果があるのだろう。
気持ちは乗らないものの、何とか竿を出したい一心で歩いて行った。
慣れたルートを進む内に空は完全に明るくなって行く。
やがて先端まで来ると、おそらく未明時より投げきっていたのだろう。
少し休憩をとっているアングラーの姿が見えた。
迷惑になってはと、攻め慣れたそこから離れた場所に向かった。
結果的には、二時間ほど粘ってみたが何も無かった。
遠くに見えるアングラー達もまだまだ諦めていない様子である。
一人、また一人とポイントを後にするのを見て、様子を見る為にそこに戻ったのだった。

そこで、その一人とお話させて頂く。
今日は朝一から何も起きず、隣の方が沖でワンバイト得たが乗らなかったとの事だった。
おそらく、ツバスではないかと。
数週にわたり通い続けているが、大釣りの後は回を重ねるごとに厳しくなっているそうだ。
果たして、群れの数を抜かれているからか、プレッシャーによるスレなのかは分からない。
どちらにせよ、何人もが投げていても厳しいという現実なのである。
しばしの間、釣りの手を止め、アングラー達の釣りを眺めていた。
皆、実に上手い釣りをされている。
しかし、何も起きないまま時間だけが過ぎて行った。



とうとう、そこには自分だけとなってしまった。
時間に、何の制限も無い自身はそれでも気にしない。
確かに、朝の貴重な時間帯は特別なものではある。
もしかすれば、また次のチャンスがやってこないかと竿を振り続けて行くのだった。
目の前の海はまるで湖の様である。
またしても、すこぶる凪であった。
風も無く、目に見える潮の流れも無い。
すると、海面の様子がとてもよく見えるのであった。
目の届く範囲において、水中にはこれっぽっちのベイトも見えない。
また、いないのかと自身の不運を嘆きそうになる。
伏し目がちに目線を沖に移した時、わずかな変化を捉えた。
沖合、およそ300メーターほど先であろうか。
さざ波の様な違和感を水面に見る。
その、わなわなとしたザワメキは少し動いている様に見えた。
おそらく、何かの魚がうわずっている様である。
ボラだろうか・・・。
そう思った矢先、ボシャ!っと一つの水柱が立った。
それを皮切りに水面が爆発して行く。
そう、ナブラが起きたのだ。

水飛沫の迫力はそんなには無い。
魚の頭が見えないので、それだけではそのサイズをうかがい知る事は難しい。
それでも、過去の経験から、それほど大きなサイズには思えなかった。
おそらく、幸運なアングラー達が手にしているツバスであったかもしれなかった。
しかしその時、突如として起きたソレを嬉しいとは思わなかった。
とても苦手とする感じに思えたからである。
理由は無いが、一気にトーンダウンして行く自身を感じた。
結果として、ナブラの主は全く無視する事にした。
何も無かった様に、スローなテンポにて誘い出しを続けて行った。
やがて、あれほど遠くに見えたベイトのざわめきが、投げれば届く距離まで寄って来る。
しかし、水面を割る、奴らの姿はどこを探しても無い。
おそらく、先のナブラである程度、空腹を満たしたのだろうか。
もしかすれば、あと数時間待てば再びその時は訪れるかもしれない。
しかし、今日の自身にそれを待つ気は無かった。
腕時計を見ると午前11時前だった。
潮汐表上での干潮はもうすぐそこである。
今日の目的はあくまでも開拓であるのだ。
急いで来た道を戻り、朝のポイント向かった。






しっかりと潮が引いたとはいえ、進むべき道の水嵩は自身のスネほどまであった。
ザブザブとその道を進んで行く。
完全にあらわとなった岩の上を進むが、一番高い部分にもフジツボ、貝などがビッシリと付いている。
よくは分からないが、大潮の干潮であるからこそ、露出するのではと思った。
所々に背丈ほどの深さのタイドプールがある。
数多くの生き物たちがそこに取り残されていた。
一見して、ベイトとは思えない種族ではあるが、この磯が生命豊かである事の証である。
数か所、歩きにくい場所を越えて行くと、やっと潮の当たる海が見えて来た。
航空写真で見たよりはずっと、開けた感じに思えた。
やがて、そこだけ不自然な部分が目にうつる。
小高いそこに、脱ぎたてのウェーダーが置かれていた。
更に進むと、目標としていた岬状の磯に釣師の姿があった。
道具を見るに、ほぼ、イガミ狙いに間違いなさそうである。
初老の釣師が竿を二本出されていた。
とても狭い立ち位置が故、残念ながら、これにて釣りは不能となった。

























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おそらく、見覚えのある方もいらっしゃる事でしょう。
私の開拓など、その言葉がイメージする様なハードなものではございません。
原生林を行くとか、絶壁を降りる等々、皆様が日常的に行かれている様な磯とは程遠いのです。
それでも、まだ見ぬ自身のポイントを探して歩きます。
いつか、何かの海況、タイミングで、そんな記憶が生きる事を願って。




せっかくなので、とてもサラシが目立つ場所に立ってみた。
あわよくばヒラでもと、小型のミノーを通してみるが何も起きなかった。
少し粘ると、結構な波が打ち寄せ、頭からしっかりと浴びてしまった。
凪の海ではあるが、浅く、また複雑な地形の為か、波が立ちやすいのだろう。
意外にも険しい海の表情を身を持って知る事となった。
一通りの観察が済んだので、再び潮位が上がる前に撤収する事にする。









大きく移動しながら、付近の海を見て回ったが、どこも似たり寄ったりの感じに見えた。
どうも、最近のベイトの動きが分からない。
私の釣行時は全くベイトの姿が見えなくとも、その一日後、二日後にはベイトだらけの海であったりする。
先輩、釣友からの報告を頂き、今の自分には居ずにその状況を知る事が出来る。
有難くも、とても恵まれた環境である。
話しが逸れてしまったが、何に影響されているかは不明だが、それ程、敏感に魚達は動いていると言えるだろうか。
まさに、青物は運であるとの所以を感じるのだった。


疲れたので、少し遅めの昼食をとる事にした。
ガッツリ食べたかったので、海の近くの台湾料理店に向かった。
ランチセットをたいらげると、猛烈な眠気がやってくる。
お腹が痛くなっても大丈夫な様、キレイなトイレのある場所にて眠る事にした。
一度寝るとなかなか目覚めない私、起きたのは19時を回った頃だった。
車の外に出て伸びをすると、頬にあたる風はそよ風だった。
空を見上げる。
雲に隠れてはいるものの、綺麗な満月がうっすらと顔をのぞかせていた。
勿論、海はとても穏やかである。
この様な状況は意外と無いもの。
これならば、初心者の私でも安全に立てそうに思えた。
少し怖いのだが、久々に夜の磯に向かう事にした。







ポイントに着くと、真っ赤に光る四つの赤い目玉が私を見る。
分かっていてもビクっとしてしまう。
ヘッドライトをあてると、二匹の可愛い子狸がそこにいた。
ガサゴソ!!
ウワァ・・・っと右隣に目をやると、今度は釣師が座ってみえた。
こっ、コンバンワとご挨拶する。
餌の夜釣りをしにみえている方だった。
快く、少し離れた場所に立たせてもらえる事が出来た。
ビックリしたが、一人と、二匹の狸と一緒の釣りだ。
勇気百倍である!
よし、アオリちゃんおいでっとまずはフルキャスト。
底が定かではない為、カウントダウンはほどほどにしてシャクリを入れてみる。
沖に向かう潮にエギが馴染み、途端にぐぅーっとした重みを感じる。
おそらく、しっかりと静止している感じだ。
そこに更に重みが増した。
きたかも??
フンっと竿を振り上げると、ボスっとした感触。
やった! 一投目から乗りました。



しかし、その潮では再び抱いてくる事は無かった。
うーむ、なかなか難しい。
どこか、他に良い部分は無いかと、そのままの立ち位置から探ってみる。
シャクリとフォールを繰り返し、沈み根の位置、そして間隔を計って行った。
多少の根がかりは仕方ない。
うまくすれば、ちゃんと外れて回収出来るので恐れずに通して行く。
どうやら、少し先には根が二つ、並んで沈んでいる様に思えた。
おそらく、その間隔は約1メーター強といった感じか。
その沖にキャストし、間を通してみる。
フォール中、パチンっと僅かな感触を得た。
どうやら、アオリがいる様である。
少し動かすと、元気に持って行ったので竿を立てる。
トス!っと乗った。


二投目もすぐにアタリがあった。
アオリが群れている様である。
さすが磯といった感じに興奮した。
しばし、入れ食い? 入れ抱き!?を堪能した。




しばらくすると全く反応が無くなる。
どこへ投げても、フォールするエギが不安定に漂っている感覚なのだ。
しばし粘るが、どんどんと根に触れる感触が増えて行った。
殆ど沈ませる事なく、頻繁に岩を擦るのである。
何の事は無い、楽しんでいる間に結構、潮位が下がって行ってしまったのだ。
こうなるとさすがに厳しい。
そこで、かねてからやってみたいと思っていた、夜磯のルアー釣りをしてみる事にした。
とはいえ、今夜は大きなプラグ、ジグなどはもちろん持って来てはいない。
バッカンの中を見ると、漁港で遊ぶいくつかのルアーが転がっていた。
そのまま、アオリの道具に結んで行く。
ぴょいっと投げて、少し沈ませてみた。
おそらく、いれば魚達は見ているだろう。
殆ど妄想であるが、それを意識してアクションを入れてみた。
ぐぐん!!
来た、本当に来ました~






















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うほ!
金魚みたいな赤い魚が釣れました。
アカマツカサの仲間だったかな?

やったね!


















P1010142

そんなに大きくない魚ですが、丸々としています。
アタリは明確だし、適度に引くので楽しいです。
もう一匹だけ追加して満足しました。
帰宅後、煮付けにして頂きましたが、充分に食用となりえる感じです。
私は美味しい魚だと思いました。





















P1010147

ああ楽しかった!
良いお土産ができました。














磯からあがり、またもや眠りについた。
もう、いくらでも寝れる感じである。
次に気がついたのは、明朝6時頃だった。
またしても寝坊である。
すぐにポイントに向かったが、どこも、イガミ釣師で一杯であった。
きっと、沢山釣れているのだろう。
かなり厳しい場所にも、沢山の道具を持って入ってみえるのである。
少し移動し、Taka氏の好きな場所に行ってみた。
幸いな事に誰もいない。
しばらくキャストしてみたが、青物からの反応を見る事は出来なかった。
昨夜の釣りに、妙に釣り欲が満たされてしまった。
何か所かのポイントを見て回り、少し立ち寄った漁港にてアオリを一杯追加。
少し早いが、帰路についたのだった。









P1010153

この二日間の青物釣りにおいて、久々に下記のタックルを使用してみた。


Rod    MC Works RAGING BULL 100XF-1
Reel    DAIWA 10 SALTIGA 5000


実のところ、新型ソルティガは今まで、半日だけしか使っていなかったのである。
苦労して、やっとの思いで購入したにも関わらず。
それは何故か?
その半日の使用では、主にジギングをやっていた。
潮の緩やかな水深30メーターほどの場所にて、約70グラムほどのジグを用いていた。
釣りが終わり、水洗いしていた時に気付いたのである。
明らかな異音、そして巻きの違和感であった。
次の日、購入したショップに行って、展示品の同型と比べてみた。
スタッフの方と比べてみたが、やはり大きく違うのであった。
すぐにメーカーに送り、確認して頂く事になった。
メーカーの回答は、「違いはあるが、異常ではなく想定範囲内である」、との事。
詳しい内容は割愛させて頂くが、こうして再び使用するまでに約2か月を要したのである。
誤解の無い様に言うと、メーカーには大きな落ち度は無い。
おそらく、過剰な期待を持ち過ぎた、私の我が儘であったと思う。
思い込みの激しい私は、実は一度このリールを手放している。
返却後、一度も実釣で試す事無く。
そして、S社のハイエンドモデルのデッドストックを購入した。
しかし、運命の悪戯であろうか、ラインを巻く事なくハンドルが回らなくなってしまった。
それはただの消耗品の劣化が原因であるのに違いはない。
しかし、その時の精神状態では冷静にはいられなかった。
結果、再び我が手に戻る事となったのである。
今回、二日間の釣りではかなり酷使したつもりだ。
あくまでも私の感覚であるが、まるで全くの別ものに生まれ変わったかの様であった。
そのフィールはシルキーさを増し、使う程に馴染み行くかの様に感じたのである。
私の無理な我が儘にも、真摯な対応をして下さったショップスタッフ、そしてメーカーの方々。
また、実際に整備、調整をして下さったメカニックの方に感謝しています。
その気持を込めて、タイトル画を同機のものといたしました。

それでは